派遣法改悪案も戦争法案も阻止!廃案に パナソニック若狭裁判終結集会

 2009年3月6日、福井地裁に提訴して始まった「河本猛さんの正規雇用を支援する会」(以下、支援する会)は発足して6年4ヶ月が過ぎました。この間、多くの方々に支えられて裁判をたたかってきましたが、最高裁第2小法廷は2015年1月23日付で河本さんの上告を棄却し、名古屋高裁金沢支部の不当判決が確定しました。

 一審の福井地裁では全国的な支援を訴え、個人署名20204筆、団体署名979団体を提出し、世論形成にも力を尽してきました。11回の審理が行われ、判決日が3度も延期されるという事態も起こりました。
 裁判所は判決で、偽装請負期間の契約は請負契約とは認められないとし、パナソニックの意図的な違法派遣も認めましたが、「労働者派遣法は、派遣労働者に何らかの権利・権限などを認めていない。不法行為法上、法的保護に値する利益と評価することはできない」という結論で、河本さんの請求をすべて棄却する不当判決が出されました。
 控訴審では、個人署名8004筆、団体署名649団体、請願書も4回提出し、5回の審理と証人尋問が行われました。しかし、結審が一回延期された期間に裁判長が突然辞任するという事態が起こり、交代した後任の裁判官で結審した結果、前任の裁判長が全く判決に関わらないという状況で判決が出されました。
 判決は、福井地裁判決の結論に都合の悪い部分をすべて削除しただけのものでした。福井地裁がパナソニックの意図的な違法派遣を認めた部分が、何の理由も述べられないまま削除され、審理や証拠調べで明らかになった事実も判決に活かされませんでした。
 最高裁に上告し、第二小法廷に決定した2013年の9月から2015年1月までの1年4か月の間は、東京争議団にも加盟して毎月の最高裁要請を行いました。費用も地裁・高裁をたたかう以上に活動費がかかりましたが、皆様からの支援のおかげで何とか最高裁までたたかいぬくことができました。ありがとうございます。

 また、パナソニック若狭工場事件は、2008年秋に社会問題となった「派遣切り」の中、自らの雇用形態の違法性に気がついた河本さんが労働組合に加入してパナソニックの偽装請負・違法派遣を福井労働局に告発したことに始まりました。
 河本さんが労働局に提出した膨大な証拠資料は、パナソニックの指揮命令や従属関係を明らかにし、福井労働局も偽装請負・違法派遣を認め、パナソニックに対して「労働者の雇用の安定を図るよう」是正指導しました。
 是正指導を受けたパナソニックは、直接雇用か請負で雇用の安定を図ることを労働局に約束して解雇を予定していた工場内の派遣労働者約80人の解雇を撤回し、工場内の約80人の労働者に対して雇用継続の労働条件を提示しました。しかし、直接雇用の条件が低賃金で劣悪な労働条件であったため、河本さんと労働組合は、パナソニックの直接雇用を選択して働きながら団体交渉で労働条件を改善させていくことを決め、パナソニックに対して団体交渉を申し込みました。
 団体交渉に対してパナソニックは、「河本さんとは直接雇用関係にないから団交には応じない」と団交拒否の不当労働行為に加え、パナソニック自らが提示した直接雇用の契約書も「内部資料なので提出しない」と、約束された就労(雇用の継続)まで一方的に反故にし、河本さんの就労の場を奪いました。
 パナソニック若狭工場・正規雇用裁判は、このような労働争議の経過からパナソニックに対して正規雇用の地位確認を求める裁判闘争に発展しました。

 裁判では、不当判決が確定してしまうという結果になりましたが、裁判の結果にかかわらず、パナソニックとのたたかいでは社会問題となった「派遣切り」の中で、工場内約80人の労働者の解雇を撤回させ、雇用の継続を勝ち取ったという「労働組合の大きな成果」に誇りと確信を持ち、いつまでも労働者を保護できない労働法制や労働者を救済しない裁判所の姿勢に対して、これからも労働者の怒りをぶつけていく活動を行っていきたいと考えています。
 そのためにも、非正規・派遣労働者を保護できない労働法制の脆弱さ、みなし雇用制度を無力化し「生涯ハケン」を強いる労働者派遣法改悪の問題点を学び、労働者保護法への規制強化、労働者派遣法の抜本改正につなげる「終結集会」となるよう講演後の質疑や懇談会でも積極的な意見交換をお願いします。という経過報告の後、続けて弁護団からの講演を行いました。
画像



「河本」対「パナソニック」、事件から見た派遣法改悪案
2015年7月25日 弁護士 村 田 浩 治

1、改めて河本事件を振り返る

 パナソニック工場における違法行為の数々
 請負契約による就労    製造業で派遣が適法化される前の導入
 労働者派遣への切替   請負から数えればすでに派遣法の40条の2違反
 請負化計画         派遣の期間制限違反回避のためのより巧妙な偽装請負化
 一貫して法の規制回避目的の行為、違法行為のパレード
 これを労働局に告発し、労働組合による闘いを展開し、直用化を求めた河本さん
 低賃金のアルバイトか偽装化された請負か  労働組合の交渉拒否し雇いとめへ ← 背景には全国で起こった偽装請負への批判と告発の動き

 2006年12月  ワーキングプアの放送
 2007年7月31日の朝日新聞告発キャンペーンの財界のショック
 2008年4月25日 大阪高等裁判所でパナソニック茨木工場で雇用責任認める
 2008年9月  リーマンショック 
   株価の低迷で、不況の大波のなかで最も不安定な派遣切りが起こり提訴が相次ぐ
 2008年12月  年越し派遣村が日比谷公園で開かれる。
   河本さんの事件はこうした動きの中で、起きた事件
 2009年3月提訴  正義は労働者にしかないはずだが…。
 2011年9月14日 福井地裁判決
 2013年5月22日 名古屋高裁金沢支部判決
 2015年1月23日 最高裁上告不受理決定

2、政治の動向

 2009年7月      民主党政権誕生
 2009年12月18日  最高裁がパナソニック茨木工場での労働者の逆転敗訴
 2012年4月      労働者派遣法修正のすえ 自公民で制定(みなし規定)
 2012年12月     民主党政権の崩壊 自民党政権へ交代

3、安倍政権発足後の労働法をめぐる情勢

 アベノミクスの三本の矢「金融緩和」「財政出動」につづく「成長戦略」の実行を加速し、強化することが重要として、日本経済再生本部の産業競争力会議は、「雇用の流動化」「成熟産業から成長産業へを実行すること」を掲げている。しかし、中身は、労働法制の規制緩和であり、「世界で企業が最も活動しやすい国をつくるための戦略」と公言されている。

(1)雇用特区構想 国家戦略特区法で具体化

 3月7日、非正規労働者など働く期間を区切っている「有期雇用」の契約期間を延ばす有期雇用労働者特別措置法案を閣議決定した。
 年収約1000万円を超える専門職の労働者は、有期雇用で働ける期間を最長5年から10年に延ばす。定年後に同じ企業グループで再雇用される高齢者も5年超の有期雇用を可能にする。今国会に提出し、2015年4月の施行を目指す。2013年施行の改正労働契約法の5年超の場合は、無期雇用に転換を求める権利の例外とする。今国会で成立の可能性大。

(2)労働時間規制の緩和

 企画業務型裁量労働制 
 フレックスタイム制  
 ホワイトカラーエグゼンプション
 労働時間蓄積制度  時間外労働を金銭補償から休日代替制へ

(3)限定正社員制度
 正社員と異なる契約制限をした場合、解雇をしやすい社員をつくる意図
 解雇の金銭解決制度

4、労働法制の先陣を切る労働者派遣法改悪

 派遣の歴史をみれば、なぜ派遣法からなのかがよくわかる。

 1947年 職業安定法制定 労働基準法6条による中間搾取の禁止

 戦前の半封建的制度として排斥

「新しく実施される職業安定法は今まで日本にあった人夫供給業とか親分子分による口入れ稼業というものを根本から廃止してこの封建制度が生んだ最も非民主的な制度を改正し、労働者を鉄か石炭かのように勝手に売買取引することを日本からなくして労働者各人が立派な一人前の人間として働けるように計画されたものである。」(GHQ労働課労働者供給事業禁止担当官コレット)
 ただし※偽装請負の胎動。アメリカのマンパワー法人による事務委託の拡大

 1985年 中曽根内閣(戦後政治の総決算) 国鉄民営化。男女雇用機会均等法、労働者派遣法
 それまで、中間搾取の禁止(労働基準法6条)、労働者供給の例外として人だし業を復活。 業務による制限を導入。従前の雇用慣行を破るものではないとして説明。国会決議で常用労働者に代替とならない制度とすることを確認。
 当初は10業務に限定して開始制定  ポジティブリストによる派遣導入
 1996年  派遣業務の拡大  26業務について派遣が許容
 1999年  派遣の原則自由化 法案による大転換
       一時的労働としての派遣として許容。ネガティブリスト化
 2003年  小泉内閣時代  製造業で禁じていた派遣を解禁
 2008年  年末 年越し派遣村が誕生 
       貧困の温床としての派遣に対する認識
 2012年  民主党政権下で、日雇い派遣の禁止 
       偽装請負、期間制限違反の派遣の場合の「直用みなし規定」導入
 2014年  改悪案は二度も廃案になったが。 

5、2015年派遣法案の内容

 2012年法は風前の灯火となりつつある。
 なぜなら、2015年(廃案となった2014年と同じ内容)
 常用的な派遣労働者は例外としつつも、例外の場合を拡大。固定化を可能とする→ 常用代替の禁止原則が事実上なくなった。

(1)現行の業務毎の派遣先の受け入れ期間の制限

(2)法案による変えられる部分

ア、部署毎の延長を可能とする制度 過半数労働者代表からの意見聴取
 派遣元での常用雇用の場合は期間制限なし
 人だし業の事業化を拡大  派遣会社の寡占化を狙う?

イ、人ごとの制限は継続
 企業は延長により、派遣は永続化 人は三年毎に入れ替え必要。
 部門を変えての派遣の永続化。 直接雇用みなしの規定の余地なくなる。
 派遣の永続化、固定化。

ウ、危惧される事態
 労働者の階層化、序列化の進展
 派遣先企業が切りにくい順番に序列化する?
 正社員、限定正社員、契約社員、常用派遣社員、登録型派遣社員

6、2015年派遣法をめぐる最近の情勢

 6月19日、衆議院本会議で強行採決 しかし、まだ廃案に追い込める要素がある。
 民主党を初めとする野党の変化 衆議院での審議で徐々に浸透
 維新の裏切りがなければ強行採決は出来なかった。
 非正規労働者の声を集めたアクションによる変化
 アンケート開始2日で200の回答  7月17日までに765人の回答
 ここで発言できるならと声を寄せ 国会議員要請にも17人が参加。
 当事者の声が報道にも変化を呼ぶ。
 参議院に写り、7月8日に趣旨説明開始 年金情報、安保法案で審議入りが2週間遅れ7月30日から審議開始。成立強行しても8月末頃までずれ込むから9月1日施行に間に合わない。
 自民党公明党も入った法案の修正できないまま2012年法がどうなるのか

7、派遣法改悪は、あらゆる大改悪の第一歩 
   先陣走る労働者派遣法改悪を止める意味

(1)労働契約が商事契約へ 労働は商品ではないは建前に
   派遣労働者は派遣元に雇われているから、問題ないのでは?
   派遣契約で左右される雇用関係
   常用型派遣でも、安心できない 整理解雇の法理。

(2)すさまじい人権侵害
   妊娠したら、解雇された。
   上司に意見をいったら更新されなかった。
   セクハラを訴えるのをやめたが雇い止めになった。
   派遣契約が終わったら捨てられた。
   正社員に指導していたら、翌年契約が切られた正社員が仕事をしている。

(3)派遣法改悪の弊害は被害をうける労働者の多寡の問題でない。
   労働は商品ではない。
   労働契約は人格を売る契約ではない。
   労働者が意見を言えない社会では戦争法案反対の声すら出せない。

8、最後に

 河本裁判支援の最後に派遣法改悪反対を言わなければならないことは悲しいことです。しかし、絶望してはいられない。派遣法改悪で身分が不安定になり、労働法制の改悪で生活時間も奪われた労働者が、憲法改悪問題に意識をさくことが果たして出来るのかと考えると労働者派遣法改悪は、憲法改悪阻止の闘いにもつながる最前線といえる。
 「不幸は常に神秘である。ギリシアのことわざもいうように、不幸は語らない。その本当のニュアンスや原因をとらえるためには、自分自身の心の分析をする用意がなければならないが、普通そういうことは不幸な人々には出来ない。分析の能力があっても、その能力を働かせること、考えることが、不幸そのものによって妨げられるからである。」(シモーヌヴェーユ「工場生活の経験」)




 海道宏実弁護士からは、「許すな!雇用破壊 労働法制大改悪」
 ➀労働時間規制緩和
 ➁ジョブ型正社員
 ➂解雇金銭解決
 ➃国家戦略特区
 ➄民間人材ビジネス活用
 この5つの問題と、どのようにたたかうか、というテーマで講演していただきました。

 また、河村学弁護士、吉川健司弁護士からそれぞれコメントをいただきました。


 集会を終えて、

 派遣法改悪や労働法制の弱体化が進めば、困窮する生活の中で、社会全体が目の前の生活しか見えないようになってしまい、社会にモノが言えない労働者が蔓延してしまいます。そうなれば利己的で自分の事しか考えられないようになってしまい、憲法違反の戦争法案に公然と反対する事さえできない社会になってしまうということに危機感を持たなければいけない。
 安倍総理や経団連のような権力者が進める憲法破壊の企てと、労働者派遣法改悪も戦争法案も一体であり、どちらの改悪法案も必ず阻止し廃案にするという住民運動の高まりが必要だと感じました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック