パナソニック若狭裁判 最高裁要請 11月

 本件は、1999年から続くパナソニックが違法に偽装してきた雇用状態の下で働かされてきた河本猛さんが、労働局の是正指導(2008年12月)もあり、パナソニックから提示された本来の雇用形態である直接雇用(2009年1月16日)を選択し、労働契約の本質的要素の合意がなされた後、労働条件(有期間雇用・時給810円のアルバイト)が差別的かつ報復を意図する劣悪なものであったため、所属する労働組合を通じて、均等待遇を求める団体交渉をパナソニックに申し込んだところ、労働局申告、直接雇用の選択、労働組合への加入、団体交渉などを嫌悪するパナソニックが、雇用継続の基準を満たす河本さんの就労の機会を奪い、職場から排除することで報復を成し遂げた事件です。

 本件は、派遣切り後の地位確認ではありません。すでに直接雇用による継続雇用が成立している「雇用継続の基準を満たす労働者」の地位確認であることを原判決は看過しています。

 河本さんが「雇用継続の基準を満たす労働者」であり、パナソニックによる継続雇用が約束されていたことは、乙A3号証をしっかり見ていただければわかります。

 乙A3号証は2009年1月16日にパナソニックが河本さんに明示した直接雇用の労働条件です。

 パナソニックは労働局の是正指導を受け、すでに河本さんが雇用継続の基準を満たす労働者であったことから乙A3号証を示し、河本さんの労務提供の対価として賃金支払いをする旨を明示しました。

 河本さんは1月22日、直接雇用を選択する意思をパナソニックに示しているので、労働契約の成立に必要な労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意があることは明確です。

 1月16日に示された乙A3号証には、契約日4月1日と記載されています。これはパナソニックによる継続雇用が2009年4月1日付で開始されることを意味しています。

 労働契約の成立に必要な労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意があった1月22日以降、労働組合と河本さんは、4月1日から開始されるパナソニックによる継続雇用を期待し、労使双方が納得した労働条件で4月1日からも継続して就労ができるよう、団体交渉による労働条件の改善や契約書の締結に努力していることから、パナソニックによる直接雇用で就労する意思があることは明確です。

 更に平成21年3月31日に、河本さんの代理人である村田浩治弁護士が送付したファックス内容(乙A10)は、パナソニックが河本さんに直接雇用を申込みながら、労働組合の団体交渉にも応じず、すでに契約の承諾の期限が過ぎているとした対応に終始したため、再度、河本さんがパナソニックに対し賃金を得て労務提供する意思があることを表明したものです。

 「貴社からの条件提示に対し異議を留めたうえで、就労する意思がある」と述べているとおり、労務提供の意思と対価としての賃金支払いの意思の合致があったと認定できます。

 河本さんは、「条件提示に対し異議を留めたうえで、就労する意思がある」として4月1日にパナソニック若狭工場を訪れ、就労と1月16日に明示した内容の契約書の提出を求めています。

 賃金額及び契約期間に対する労働条件が協議中であっても、労働契約の本質である労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意を妨げることにはならず、審理において、河本さんがパナソニックの直接雇用を拒否したという事実はなく、河本さんは、パナソニックによる継続雇用で働く意思を示し続けているのでパナソニックと河本さんの間の労働契約が否定される根拠はどこにもありません。

 原判決は、労働契約の成立に関して、相手方パナソニックの主張を採用し、労働契約の本質的な要素である期間の定め及び賃金について異議をとどめた意思表示は、新たな申込みとみるべきであって、これによって労働契約が成立したものと認めることは困難であるから、河本さんの主張は、主張自体失当である(原判決34頁)との判断を示したことが、河本さんの継続雇用を否定する根拠になっています。

 しかし、労働契約法6条は「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することにより成立する」と規定しています。

 原判決は、労働契約の要件に関する解釈を誤るものであり、東京高等裁判所・平成23年12月21日判決が示す、労働契約の成立は「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意した場合には、賃金の確定的額など労働条件の内容について合意に到っていない事項がある時であっても、労働契約の成立は妨げられない」との判例にも反しているから取り消されなければなりません。

 また、パナソニックによる継続雇用の開始が2009年4月1日からと明示された経緯について申し上げます。

 パナソニックとケイテムが個別契約を解消した日は、「乙A2号証の5」に記載される平成20年10月31日の期限です。

 パナソニックと日本ケイテムは「乙A2号証の6」を基に「乙A15号証の7」「乙B5号証の8」「甲3号証の8」を作成しますが、業務内容、派遣先・派遣元責任者、指揮命令者などの記載内容が「乙A2号証の5」までと異なるばかりか、「乙A15号証の7」には社会保険が加入と記載されていながら、「乙B5号証の8」では資格喪失となっていること、「乙A15号証の6」の契約期間は2008年11月15日までとなっているにもかかわらず、「乙A15号証の7」の契約開始日は11月1日と記載され、これまでにない期間満了をさかのぼっての契約開始となっていること、河本さんが「契約は11月15日にもう切れている・・・」(一審本人調書31頁)、1月28日になって日本ケイテムから契約書にサインを求められたので断ったと証言しているように、「乙A2号証の6」「乙A15号証の7」「乙B5号証の8」「甲3号証の8」は労働局の是正指導(2008年12月18日)後に労働者の解雇ができなくなったパナソニックが、形式を整えるために急遽作成したものであることが明らかです。

 当時の社会情勢は「派遣切り」の真っただ中であり、パナソニックと日本ケイテムは業者間契約も個別労働契約も更新することなく、甲5号証から甲7号証で希望退職に応じるよう迫っていたことから、形式的に介在する日本ケイテムに河本さんの雇用を存続させる意思はありません。

 労働局の是正指導がなければ、パナソニックは10月31日をもって日本ケイテムとの契約を解除し、日本ケイテムもパナソニックの●●班長が作成した計画(甲32号証)に従い河本さんらを解雇していました。

 パナソニックの●●班長も「平成20年11月5日、河本さんらに対して、販売の急速な減少に伴い、請負の計画が中止となり、社員化することとなった旨を告げました。」(乙A19号証5頁・●●調書8頁)、と言っているように、10月31日の期限を経過して間もなく日本ケイテムとの契約を解消して社員化することを述べています。

 労働局の是正指導がなければ、形式的に存在した違法な雇用形態であっても2009年3月31日まで、パナソニックから雇用が延期されることはありませんでした。

 パナソニックが1月16日の説明会で継続雇用の開始を4月1日からと明示したのは、違法な労働契約と認識しておきながら形式を整えるために「新たな個別契約」(乙A2号証の6)を締結し、必要のない違法な雇用形態を形式的にも3月31日まで延期してしまったからに過ぎません。

 また、日本ケイテムは3月31日で撤退することをパナソニックと協議して決定しており、甲8号証においても3月31日の期日を指定してパナソニックの工場を撤退しています。

 その際、甲8号証には「PEDJ(株)若狭ディビジョン様内PEP(株)での就労を希望する。」という項目があり、パナソニックが直接雇用と請負会社(PEP)移籍の選択肢を明示し、河本さんが直接雇用を選択して労働条件をめぐる団体交渉中であることを日本ケイテムは知っていながら、直接雇用の選択肢を記載せず、請負会社(PEP)移籍のみを記載していることから、直接雇用を回避することを目的にパナソニックと日本ケイテムが共謀して請負会社(PEP)に移籍するよう誘導する意図がうかがえます。

 パナソニックと日本ケイテムが請負会社(PEP)移籍に共謀していたとしても、日本ケイテムはパナソニックが示す選択肢を容認し、河本さんがパナソニックに継続雇用され、日本ケイテム以外の雇用先(パナソニック)で就労することを既に認めているのですから、日本ケイテムが河本さんの労務提供を必要としていないことは明らかです。

 河本さんはパナソニックに労務提供を行い、パナソニックが管理する勤務管理表(甲31号証)に基づいて賃金の支払いを受け(一審本人調書16頁)、休業期間中の補償もパナソニックが支払っていた(二審本人調書15頁)と認識していたのですから、日本ケイテムと河本さんの間に労働契約が成立することはありません。

 違法な労働契約書が形式的に存在したからと言って、パナソニックと河本さんの継続雇用が妨げられる理由にはなりません。

 パナソニックと河本さんの労働契約の成立に必要な、労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意は明確で、パナソニックと河本さんの継続雇用を妨げる要素はなく、裁判所が示すべきは労働契約の成立を認め、労働実態・事実関係から最適な労働条件を導き出すことです。

 次に、原判決が適法な弁論や証拠調べの結果を無視して事実と異なる違法な事実認定を行っていること、十分な証拠分析や事例判断、争点整理がなされなかった事情について申し上げます。

 控訴審・第4回口頭弁論(2012年12月3日)において、山本博裁判長は「双方から提出された準備書面があるので、もう1回、弁論を入れたい」と、当日結審する予定であった審理を延期したいと述べられました。

 この結審延期に関して、上告人・被上告人の代理人から結審延期の必要性がないことが述べられました。

 しかし、慎重審理を行うというのであれば、頑なに拒否する理由もなく、2013年2月18日に結審が延期されることになりました。

 ですが、延期されたその間に、山本博裁判長が突然依願退官し、市川正巳裁判長に交代しました。

 交代した市川正巳裁判長は、結審が延期となった理由である準備書面に対する意見を述べることも審理を延長することもなく事務的に結審し、判決(2013年5月22日)に至りました。

 本来であれば、第4回口頭弁論(2012年12月3日)で結審することができたのですから、判決は後任の裁判長が代読するとしても、すべての審理にかかわり、証人を採用して証拠調べを行った山本博裁判長の職責において判決が書かれるべきです。

 山本博裁判長が依願退官するにあたり、結審をわざわざ延期する必要はありません。

 結果として、山本博裁判長は、結審を延期することで判決に全く関わることなく、本件に対しての職責を全うしませんでした。

 河本さんの職場復帰を願い、裁判を支援してきた私たちは、裁判長が結審を延期するにあたり慎重審理を行うつもりはなかったと考えています。

 裁判長は依願退官するにあたり、判決に関わることがないよう、わざわざ結審を延期したとしか考えることができません。

 また、原判決は、抽象的な表現で直接雇用の成立を否定するのみで、具体的な理由や判断の根拠付けが述べられていない理由不備や判断遺脱、審理不尽の上告理由(民事訴訟法312条2項6号)が認められることから、名古屋高裁金沢支部において、突然の支部長・裁判長の交代ということがあった中で、慎重に審理を進めないまま事務的に結審して判決に至った経緯を考えると、あってはならないことですが、十分に慎重な分析や判断を怠った判決が出されたとしか言えません。

 その理由として、上告及び上告申立て理由書やこの間の要請でも明らかにしてきたように、原判決が、適法な弁論や証拠調べの結果を無視して事実と異なる違法な事実認定を行っていることから、十分な証拠分析や事例判断、争点整理がなされていないと判断できるからです。

 本件は、労働者にとって、「生きるための生活」と「人間らしく働く権利」がかかっている重要な裁判です。

 名古屋高裁金沢支部支部長・裁判長であった山本博裁判官が自らの職責を全うせず判決に至った事情は、裁判所によせる国民の信頼を失墜させるものです。

 ましてや、理由不備や判断遺脱、審理不尽の上告理由(民事訴訟法312条2項6号)が認められ、適法な弁論や証拠調べの結果を無視して事実と異なる違法な事実認定を行っている原判決を最高裁が認めてしまっては、法の番人である最高裁の権威が失われてしまいます。

 最高裁におかれましては、控訴審における裁判長退官に関わる手続きや前後の事情も考慮していただきますようお願いするとともに、原判決には、判例違反や判決に影響を及ぼすことが明らかな法令解釈の誤りが認められるので、一刻も早く上告を受理し、原判決を破棄していただきますよう強く要請します。

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この記事へのコメント

裁判官次第にみえる
2014年11月24日 05:53
雇い止めに関する裁判記事をみていますと、事案が異なるから判決も違うというには、裁判官の判断に落差が有りすぎに見えて仕方ありません。

三審制というものの、自分には裁判に公平さがみえません。裁判所は必要なのか?裁判より自力救済を認めた方がよいのでは?と思うくらいです。

最高裁は裁判官次第にみえる判決ではなく、一般人が納得できる公平な判断をして欲しいです。

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