パナソニック若狭裁判 最高裁要請 10月

 原判決には、(1)黙示の労働契約が成立しない理由について全く付されていないばかりか、「特段の事情」の有無についても全く判断が回避されており、(2)明示の労働契約が成立しない理由についても付されておらず、(3)さらに信義則違反を根拠とする損害賠償の成否についても全く判断が回避されています。
 よって、原判決には、理由不備、判断遺脱、審理不尽の上告理由(民事訴訟法312条2項6号)が認められます。

 第一審、第二審において、パナソニックの偽装雇用の片棒を担いできた派遣請負会社と称する日本ケイテムは、証人を出廷させず、自らの主張を何ら立証していません。

 パナソニックの従業員として働いてきた河本さんの労働実態を示す証拠やパナソニック社員と河本さんの証人調書に比べれば、日本ケイテムが提出した証書は極わずかしかなく、日本ケイテムが提出する雇用契約書も、偽装請負・違法派遣を繰り返し、パナソニックが偽装雇用を行うために、表面上、河本さんを外部労働者に装うための形式的な契約に過ぎないのですから、このような雇用契約書が存在しても、河本さんを日本ケイテムの従業員であると認定することは不可能です。

 しかし、原判決は、河本さんの証言が信用できないこと、日本ケイテムが契約書、賃金台帳を提出していることを理由に、パナソニックと河本さんの雇用関係を否定することで、河本さんをパナソニックの偽装雇用の片棒を担いできた日本ケイテムの従業員であるとしています。

 ですが、原判決が示すように、河本さんの証言が信用できないのであれば、日本ケイテムに関する証言は、河本さんが証言した内容以外に存在しないばかりか、その内容も「日本ケイテムの実態などわからない」というものであり、当然、日本ケイテムの主張は何ひとつ立証されていないのです。

 裁判所は、審理で全く立証がなされていないにもかかわらず、契約書、賃金台帳の提出だけをもって、それらに基づいた事実認定を行うのですか?
 一審、二審の主張や証書が信用できないのは日本ケイテムであり、何ら立証もされていない、誰がいつ作成したのかも不明な証書のみで事実認定を行うなどあってはなりません。

 審理で明らかなのは、日本ケイテムに雇用主としての実態が無いことです。原判決は、何ら信用性の無い証拠を根拠に、パナソニックと河本さんの雇用関係を否定している一方で、パナソニックと河本さんの雇用関係や労働実態を示す証拠や証言をことごとく排斥しています。

 原判決は、「偽装請負・違法派遣であっても派遣先との直接雇用関係は成立しない」との考えに固執する結論に誘導するために、適法な弁論や証拠調べの結果を無視して事実を歪める違法な事実認定を行っています。

 河本さんの主張に沿う証拠が不自然で信用できないと判示した理由についても、「河本さんの第1審における主張及び証拠等に照らして」とだけ判示するのみで(原判決34頁)、具体的にどのような主張内容と証拠がいかなる意味で不自然で信用できないと判断したのか、全く判示されていません。抽象的表現のみで理由を示さず違法な事実認定を行っている原判決は取り消されるべきです。

 また、この事件は、パナソニックによる偽装雇用であったことから「偽装請負・違法派遣」が含まれますが、派遣切り後の地位確認や立法に求めるべき労働者の権利拡充を最高裁に求めているものではありません。

 この事件は、パナソニックの直接雇用による河本さんの継続雇用が、恣意的理由かつ報復を意図して職場から排除されたもので、すでに直接雇用が約束された「雇用継続の基準を満たす労働者」の地位確認であることを忘れてはいけません。

 労働局の是正指導後は、日本ケイテムと河本さんの間に形式的な契約書の締結すら存在していません。一方でパナソニックは、労働局の是正指導を受け、偽装雇用を行った約80人の労働者に対して、直接雇用を含む3つの選択肢を示し、継続雇用することを約束しました。
 河本さんはパナソニックが提示する直接雇用を選択し、労働組合による条件改善の団体交渉を申し込んでいます。

 審理において、パナソニックが河本さんに直接雇用の申し入れを行ったこと、それに対して河本さんは、本来の雇用形態であるパナソニックの直接雇用で就労する意思を示していること、そのことに双方争いはありません。

 労働争議となった原因は、労働組合を通じて、賃金の金額と契約期間に対して、労働実態と同等、もしくは均等待遇で雇用するよう団体交渉の申し入れを行ったことに始まっています。

 パナソニックは団体交渉に応じないばかりか、団体交渉を申し入れたことを理由に、河本さんが直接雇用を拒否したと主張し、原判決も「労働契約の本質的な要素である期間の定め及び賃金について異議を留めた意思表示は新たな申込みでしかない」として、河本さんが直接雇用を拒否した結果であるとしています。

 しかし、労働組合と河本さんはパナソニックが一方的に示す劣悪な労働条件に対して、労使が話し合い、労使双方が納得した労働条件で就労が開始できるように団体交渉を申し込んでいるのであり、団体交渉を申し込むことにより明確に直接雇用で就労する意思を示しています。

 河本さんが直接雇用を拒否しているのであれば、労働組合に加入してまで団体交渉や訴訟を起こす必要などありません。
 すでに約束された直接雇用(継続雇用)を不当に拒否しているのは、恣意的かつ報復を意図して就労の機会を奪ったパナソニックです。

 原判決は事実関係を強引に歪めて、直接雇用関係を妨げる解釈をしていますが、河本さんは、パナソニックに対し「異議を留めたうえで、就労する意思がある」と代理人を通じて明示しており、直接の雇用関係の成立が妨げられる理由は何ひとつありません。

 労働組合による団体交渉の内容で、賃金の金額、契約期間に異議を申し立てたことを理由に、契約拒否や「労働契約の本質的な要素である期間の定め及び賃金について異議を留めた意思表示は新たな申込みでしかない」として雇用契約の成立を否定する解釈が成立してしまっては、団体交渉において賃金の金額や契約期間に関する条件に異議を唱えることができなくなります。

 これでは使用者の条件提示を一方的に容認するほかなく、賃金の金額や契約期間に関する条件に異議を唱える者は、すべて契約を拒否する者とみなされ、異議を留めても新たな申し込みとして雇用契約が否定されるとなると、労使が対等な立場で契約締結を行うことなどできなくなります。
 原判決の解釈は、憲法28条が認める労働基本権を無に帰してしまいます。

 原判決は、「偽装請負・違法派遣であっても派遣先との直接雇用関係は成立しない」という観念に固執するあまり、すでに直接雇用が約束された「雇用継続の基準を満たす労働者」の地位確認であることを看過しているばかりか、憲法28条が認める労働基本権を無に帰すという憲法に反する解釈を行っています。

 最高裁におかれましては、一刻も早く原判決を破棄していただきますよう強く要請します。

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この記事へのコメント

いつになりましたら
2014年11月05日 19:31
いつになりましたら、
最高裁は結論をだしてくれるのでしょうか?

結論にかかる時間は事案によるといいますが、
最高裁が検討しているのか、塩漬け(?)にしているのか、
わかりません。
労働者の立場を考えて欲しいものです。

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