パナソニック若狭裁判 最高裁要請 6月

 東京高等裁判所は、平成23年12月21日判決において、労働契約の成立は「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意した場合には、賃金の確定的額など労働条件の内容について合意に到っていない事項がある時であっても、労働契約の成立は妨げられない」との判断を示しています。

 労働契約法6条は、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することにより成立する」と規定しています。

 労働契約法6条の規定は、労働者が使用者に使用されて労働することは必要であるが、その労働期間の合意を要件としていないし、多くの論考が期間の定めは労働契約の本質的要素とは考えていない(『労働事件審理ノート[第3版]』11頁)と明記しています。

 労働契約の本質は「労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意」ですから、パナソニックは福井労働局から是正指導を受け、2009年1月16日に河本さんに対して直接雇用を含めた選択肢の提示を行い、河本さんは直接雇用を選択しているので、労働契約の成立に必要な労務提供とその対価としての賃金支払いをする旨の合意があることは明確です。

 労働契約は、その基本的な合意があれば、最低賃金や労働時間、均等待遇など、同僚の労働条件から法定された条件の確定が可能なのでありますから、労働契約の成立に際して、合意が抽象的な内容のものであったとしても差し支えはなく、労働の種類・内容や賃金の額・計算方法に関する具体的な合意であることを要するものではない点については、学説上も争いがありません(菅野第9版77頁,詳説労働契約法85~87頁等)。

 ところが原判決は、労働契約の成立に関して、相手方パナソニックの主張を採用し、労働契約の本質的な要素である期間の定め及び賃金について異議をとどめた意思表示は、新たな申込みとみるべきであって、これによって労働契約が成立したものと認めることは困難であるから、控訴人の主張は、主張自体失当であるとの判断を示しました(原判決34頁)。

 異議があるのは、賃金の金額と契約期間等であり、その不合致は労働契約の意思の合致を妨げることにはなりません。

 労働条件の詳細な意思の合致を河本さんに求めた原判決は、労働契約の成立要件の解釈、パナソニックからの労働契約の申込みの条件が提示された経緯、河本さんが労働契約締結に向けて労働条件の本質的要素についての意思表示を示していた事実等を考慮せず、あまりにも詳細で厳格な意思の合致がなければ労働契約の成立を認定しないというのは、労働契約の要件に関する解釈を誤るものであり、取消されるべきです。

 松下PDP偽装請負事件は、労働局の是正指導を受けたパナソニックが、告発者を有期期間雇用ではありますが直接雇用し、その際にも労働条件に対して異議を申立て団体交渉が申込まれています。

 パナソニックは団体交渉ではありませんが、労働組合との話し合いの場を持ち、労働組合からパナソニックが提示する条件が低すぎるので例えば時給1600円にならないか、という提案が出された後に、時給1600の雇用契約書を作成し、労働契約を交わしています。

 パナソニック若狭工場事件は、労働局の是正指導を受けたパナソニックが、河本さんに対して直接雇用(有期間雇用・時給810円・アルバイト)の提示をします。

 河本さんは直接雇用を選択し、労働条件の均等待遇を求めて団体交渉を申込みましたが、パナソニックは雇用関係にないと交渉を拒否しました。

 その後も河本さんと労働組合は団体交渉を求め続け、3月4日になってようやく話し合いの場が持たれました。しかし、労働条件の説明を受けただけで、契約書の提示を要求しても拒否されてしまいました。

 パナソニックは労働条件を提示しながら契約を締結させる手続きをおこなわず、職場から河本さんだけを排除しました。

 松下PDP事件は、直接雇用による継続雇用が成立し、交渉により労働条件も大幅に改善された後に、期間満了で契約通りに雇用関係が終了する経緯をたどったのに対し、パナソニック若狭事件は、直接雇用による継続雇用が成立しているにもかかわらず、団体交渉を求めると一転して直接の雇用関係を否定し、報復として一切の交渉を認めず低賃金の有期期間雇用に固執し、それでも河本さんが異議を留め就労(契約書の締結)を求めると、契約の手続きすらおこなわないという経緯をたどっています。

 河本さんの場合は、松下PDP事件と比較して、労働局の是正指導と労働組合による団体交渉を意図的に放置し、その結果、直接雇用による継続雇用が成立している河本さんの就労の機会を奪った点で、前記判例よりも悪質で意図的な違法行為が認められるにもかかわらず、原判決が雇用契約の成立、損害賠償すら認めないのは最高裁平成21年12月18日判決に反しています。

 最高裁におかれましては、上告を受理し、原判決を破棄していただきますよう強く要請します。

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この記事へのコメント

そして
2014年10月08日 15:42
労働法などわからないと思いつつ、途中まで拝読して、これは松下PDP偽装請負事件より悪質ではないか?と思いました。
そうしましたら、後半に“より悪質”との文言がありました。

一般人ですら、会社の対応はおかしい。一個人への報復、ハラスメントにしかみえません。
会社の都合で規則(というのでしょうか?)を変えていると思いました。生活手段を奪う、こんな事がまかり通るのは変だとしか、言いようがありません。
そして雇用しないというのも、大きな括りでみますと、立場を利用したハラスメント、パワハラに思います。何も怒鳴ったり、殴ったり、無視したりするだけがパワハラではないですから。

一般の人間にとって、司法は最後の救済を求める場です。司法が事実をみて、救済すべき者を救済する場であることを願います。

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