上告受理申立理由書(2)、パナソニック若狭工場・地位確認等請求上訴事件

第4、不法行為に基づく損害賠償を否定した原判決の誤り(民法709条、労働者派遣法40条の2の解釈)

1 雇用安定の措置を取るべき義務違反を否定した誤り

 原判決は、相手方パナソニックが申立人を指揮命令して労務提供させ、それを利用してきた行為が、労働者供給(職安法44条違反)にも該当せず、労働基準法6条は、第三者をして仲介させる行為であるから労働者派遣の実態にある本件は労基法6条にも該当しないこと、相手方らは労働局の是正指導に基づき申立人に対して有期契約とはいえ平成21年1月に労働契約締結等を提案するとの限度で違法状態の是正を図ったから、申立人の法律上の利益を侵害したものと認めることは出来ないと判断した(原判決36頁)。
 原判決は、是正指導がわずか3ヶ月の有期契約の締結の提案をしたことをもって是正を図る行為とした。
 そして申立人がこれに応じなかったこと等を理由に、相手方らが雇用安定の措置を取るべき義務に違反したとも、控訴人の法律上保護される利益を侵害したものとも認めることは出来ないとの判断を示した。
 原判決の上記の理由を見る限り、原判決が認める申立人の法益とは、3ヶ月の程度の有期契約の提案をもって回復されるに過ぎないと判断しているものと解される。
 しかし、申立人の法益をこのように限定的に解する原判決の判断は、労働者派遣法等によって保護される法益をきわめて限定的に解し労働者派遣法及び職業安定法によって保護されるべき労働者の法益の解釈を誤っている。
 申立人は、相手方らの違法な契約形態の下で平成17年2月21日から平成21年3月31日までの4年2ヶ月もの間、20代後半から30代という極めて重要な年齢の時期にキャリアを重ねてきた。
 そして相手方らが、この10年以上にわたって違法な就労形態で労働者を利用してきたことも争いのない事実である。相手方らが適法な形で労働者を利用しようとすれば、平成11年から違法状態が継続し、すでに6年も経過していたわけであるから特に申立人を就労させようとした当時は、すでに申立人を直接雇用する外なかった。
 それにも関わらず、申立人は、請負ないしは労働者派遣契約の形態で、一貫して違法派遣状態で就労をさせられてきたのである。
 一般に労働者が同じ就労場所で就労を継続すれば、それに見合った利益、すなわち雇用継続に対する期待権が認められこれは保護されるべき法益とされており、いわゆる雇い止め法理として判例確立し、裁判所も保護されるべき法益として認めている。
 適法な雇用関係ならば、申立人が4年以上も積んだキャリアは当然保護される法益となるのであるから、申立人には何の責任もない。相手方らの違法な契約関係の結果、申立人が継続雇用の利益を失うことになるのであれば、相手方らの行為により申立人が4年の就労継続によって得られた法益が侵害されたことは明らかである。
 原判決は、労働者派遣法違反が取締り法規違反でしかないから、それをもって申立人の法益がただちに侵害されたとの判断が出来ないと解釈したようであるが、相手方らの違法行為が取締法規違反か否かではなく、相手方らの違法行為によって申立人の侵害された具体的法益の有無を判断し、民法709条の違法性を備えるか否かを検討すべきである。
 原判決はさしたる検討もないまま、職安法及び労基法の解釈だけをもって申立人の法益侵害はないとしたのは、不法行為の法益侵害に関する解釈を誤ったものであり、違法な就労形態のもとで就労させてきた使用者の不法行為の違法性の判断を誤っていると言わざるを得ない。
 申立人は、違法就労の下にあっても請負化計画では、リーダー候補となるなどキャリアを積み、評価もされてきたのである。それにも関わらず、相手方パナソニックは労働局の指導を受けて直接雇用を求めている申立人(労働局に申告し、派遣労働者のなかで唯一直接雇用を望んでいる)に対し、時給810円、3ヶ月の雇用契約の提案を行うだけで一切の交渉を拒んだのである。
 かかる相手方らの行為が、申立人が形成した継続就労によって獲得した従前と同様の業務に従事できると期待する法益を侵害していることに鑑みれば、相手方パナソニックが、わずか3ヶ月の有期契約のみをもって雇用の安定をはかる措置をとるべき義務違反が尽くされたとした原判決の解釈は、民法709条、労働者派遣法(1条、40条の2、40条の4)の解釈を誤ったものである。

2 雇用契約申込義務違反による損害賠償

 労働者派遣法40条の4の規定は、派遣就労受入期間の制限(派遣法40条の2)違反のもとで、派遣先による派遣労働者に対する責任根拠として平成16年3月1日に施行された規定である。
 相手方らの契約は、すでに期間制限に抵触している以上、労働局は労働者派遣契約を直ちに解消することを求めたため、相手方らに対して申し込み義務は発生していない。
 しかし、適法な派遣ではないがゆえに相手方らに派遣法40条の4が適用されないとする判断は、違法な行為をしたものに対し、本来負うべき法的義務を免除することになりかねないから、これらを適用すべきである。
 原判決は、労働者派遣法40条の4の解釈を示しているから、相手方らに労働者派遣法40条の4の義務があることを前提にしているようであり、その限りでは原判決の判断は適正である。
 問題は、原判決が、労働者派遣法40条の4は、公法上の義務であり、派遣先事業主に対し私法上の義務が発生しないと解されることを前提に、この義務違反が不法行為を構成しないとした判断は労働者派遣法の解釈を誤っている。
 労働者派遣法40条の4は、「労働契約の申し込み義務」との規定をしており、契約締結の申し込み義務という規定の文言上の体裁に照らせば「公法上の義務」という解釈には無理があると解する。仮に公法上の義務でしかなく、労働局の指導勧告による間接的な形で直接雇用を促す制度でしかないとすれば、派遣法40条の3の「直接雇用の努力義務」と異ないからである。
 また、労働者派遣法40条の4の規定が成立した2003年の国会の厚生労働委員会での政府答弁によれば、直接雇用申し込み義務違反は、私法上の義務であることが前提に答弁されており、裁判では損害賠償請求権の根拠となるとの答弁がされている(甲13号証)。しかし、原判決はこの点について全く触れておらず、全く無視されている。原判決は、立法者意思は法令解釈に無関係というのであろうか。立法過程における政府答弁を無視した原判決の判断は立法府が求めている司法の役割を果たす姿勢も意思も欠けた判断である。申立人が指摘した国会での答弁に照らせば、原判決の法解釈の誤りは明らかであるが、仮に国会の政府答弁と異なる判断を示すのであれば、すくなくとも申立人がその議事録まで提出しているのであるから、裁判所はこの政府答弁と裁判所の解釈との整合性を説明すべきである。
 このような検討を全く欠いたまま、労働者派遣法40条の4が、私法上の義務の根拠とならないとした判断は、理由を欠いたものとして取り消されるべきである。
 労働者派遣法40条の4の改正案の国会での答弁を踏まえるならば、申立人が本来この規定に従って、相手方パナソニックに直接雇用申込義務違反があることは明らかである。相手方らの請負契約、その後の労働者派遣契約締結によって、労働者派遣法40条の4の適用を回避した行為が本来の義務違反として不法行為上の違法性の根拠となると解する。
 裁判所の役割を放棄した原判決の解釈は重要な法令解釈の誤りに該当し、取り消されるべきである。

3 信義則違反による不法行為

(1)派遣先が派遣労働者に対して負う信義則上の義務

 相手方らと申立人の関係は違法であっても労働者派遣関係にある以上、労働者派遣と同様、派遣元事業者である相手方ケイテムは雇用主として派遣労働者である申立人に対して雇用契約上の責任を負う一方、派遣先事業主である相手方パナソニックは、派遣労働者である申立人に対し契約上の責任を負わないとしても、派遣労働者を受け入れ,就労させる場合,労働者派遣法上の規制を遵守するとともに,その指揮命令のもとに労働させることにより形成される社会的接触関係に基づいて,派遣労働者に対し,信義誠実の原則に則って対応すべき条理上の義務がある。
 したがって、雇用の継続性において不安定な地位におかれている申立人に対し相手方パナソニックが、その勤労生活を脅かすような信義にもとる行為が認められる場合は、不法行為責任を負うと解すべきである。
 申立人は、相手方らによる信義則違反の事実を指摘したが原判決は、申立人が契約の締結もされないまま就労場所から排斥された行為は、要するにリーマンショックに伴う人員整理であり、申立人による申告行為以前から存在したものであるとして、信義則違反による不法行為責任を認めなかった。

(2)相手方らの信義則違反を根拠づける事実

ア 申立人は,P●●から,請負化計画実施の際に,ハイサイクル成形班のサブリーダーになり,それまで相手方パナソニック正社員が担当していた金型切換業務を担当することを要請された(控訴人1頁)。

イ 2008(平成20)年10月24日、相手方ケイテムから、相手方パナソニックにおける派遣労働者の人員削減が発表され(控訴人2頁)、これによって,4年近く就労してきた申立人は、リーダーとなる予定が、雇用不安に陥らされた(控訴人3頁)。
 申立人は,福井労働局に電話をし,当時社会問題となっていた派遣切り、偽装請負などの問題がないのか調査を求めた(控訴人3~4頁)。
 そして、自らの雇用を守るため,地域労組つるがに相談し、2008年(平成20年)11月22日には地域労組つるがに加入した(控訴人3~4頁)。

ウ、福井労働局は、申立人の申告を受けて、相手方らに対し、派遣労働契約がすでに抵触日を越えており、派遣労働を継続することを中止すること、その際、当該労働者らの雇用の安定をはかる措置をとるよう指導した。

エ、相手方らは、福井労働局の指導を受けて、相手方パナソニックは、2009(平成21)年1月16日,相手方パナソニックの工場において,相手方パナソニックが申立人ら社外工に対し,①時給810円のアルバイト,②相手方パナソニックが100%出資する業務請負会社パナソニックエクセルプロダクツへの移籍,③相手方日本ケイテムへの残留,という3つの選択肢を示した説明会が行われた。
 しかし、①時給810円のアルバイトについては,プロジェクターで画面に映しながら口頭で説明するだけであり,その他の②,③についても,相手方パナソニックの工場内の別室に移動して,同じくプロジェクターで画面に映して口頭で説明するだけであった(控訴人5頁)。
 申立人は、3つの選択肢に対する回答は,1月23日までにするようにという説明はあったものの、契約の締結を希望する場合はその意思表示を行うように,労働契約の申し込みを行うようにという説明は受けていなかった。また1月23日までに回答しない場合にどうなるかについての説明もなかった(控訴人5、6、19頁)したがって、契約の承諾についても意思表示する機会を失った。

オ 申立人は,上記説明会で示された3つの選択肢にどのように対応するかについて,地域労組つるがと相談した。その結果,時給810円という条件になると,従来と同じ時間働いたとしても,申立人が正社員と一緒に社外工として働いていた時期に受け取っていた賃金と比べて大幅に賃金が下がるため,受け入れがたい条件であると考えたが、だからといって,相手方パナソニックによる直接雇用を選択しないということは出来ず、直接雇用を選択して,申立人が従来どおり職場で働き続けながら,時給810円という労働条件については,団体交渉で値上げを求めることにする,そして,直接雇用を選択するにあたっては,時給810円という労働条件等については団体交渉での改善を求めていくことを留保する,という方針を決めた(控訴人6頁)。
 この方針を踏まえ、申立人は,1月22日,相手方ケイテムの●●に,時給810円のアルバイトを選択すること,しかし,今後団体交渉を申し込んで,申立人の正社員化を求める予定であるので,相手方パナソニックにその旨を伝えるよう求めた(控訴人7頁)。これに対し、●●は、相手方パナソニックに伝えておくと返答した(控訴人8頁)。同年3月4日に行われた地域労組つるがと相手方パナソニックとの間の「話し合い」においても、相手方パナソニックのP●●は,申立人が相手方パナソニックによる直接雇用を選んだことは,●●から聞いていると答えた(控訴人13頁)。●●は,相手方パナソニックに対し,申立人が直接雇用を選択したことを伝えていた。
 それゆえ,同年1月23日までの間に,相手方パナソニックも,申立人が直接雇用を選択したことを認識していたはずであるが、具体的な契約書を一切交付しなかった。

カ 申立人は,同年1月29日,地域労組つるがを通じて,相手方パナソニックに対し,団体交渉を申し入れた。この時,申立人は,確かに前記の時給810円のアルバイトを選択したものの,引き続き,正社員としての雇用を求めるという趣旨で,要求書(甲10)第1項に,正社員として雇用することを求める項目を記載した(控訴人8頁)。
 ところが,相手方パナソニックは,前記のとおり,申立人が時給810円のアルバイトを選択したことを認識しながら,雇用関係がないという理由のみで団体交渉を拒否した(控訴人8~9頁)。その上,同年2月2日には,相手方パナソニックのP●●が,●●を通じて,申立人に対し,休業を命令してきた(控訴人9頁)。申立人は,同日から、相手方パナソニックの工場で働くことができなくなった。
 申立人は同年2月20日にも,相手方パナソニックに対し,団体交渉を申し入れ,前回1月29日の団体交渉申し入れと同じく,正社員としての雇用を求めて,要求書(甲12)を提出した。また,同時に,時給810円のアルバイトの労働条件の詳細が不明確であるため,詳細を明らかにすることも求めた(控訴人10頁)。
 相手方パナソニックは,雇用関係がないという理由で団体交渉を拒否した(控訴人11頁)。

キ その後,相手方パナソニックは,申立人と地域労組つるがに対し,「話し合い」の場を持ちたいと伝えてきた。
 その結果,同年3月4日,申立人と地域労組つるがにとっては団体交渉という位置づけであるが,申立人,地域労組つるがの北西,県労連議長の平澤,相手方パナソニックの,P●●人事部長,P●●,P●●が出席して,「話し合い」が行われた。
 相手方パナソニック側は,時給810円のアルバイトについて説明した後,申立人に対し,今からでもパナソニックエクセルプロダクツに移籍すれば,申立人の賃金は従来どおりの金額が維持されると述べた(控訴人12頁)。このように,相手方パナソニックが,パナソニックエクセルプロダクツに移籍する選択肢がその時点でも有効であるという話をした理由は,申立人に対して時給810円のアルバイトという選択肢と賃金額を維持した上でのパナソニックエクセルプロダクツへの移籍という選択肢を並べて提示したことと併せて考えると,福井労働局の是正指導があるため,申立人に対して直接雇用を申し込まなければならないものの,申立人の直接雇用を何とかして避けたい,それゆえ,申立人が,パナソニックエクセルプロダクツへの移籍を選択するよう誘導しようとしたと解するほかない。
 これに対し,申立人は,既に相手方パナソニックによる直接雇用を選択していることを前提に,相手方パナソニック側に対し,就業規則や時給810円のアルバイトの契約書を出すよう求めた。
 相手方パナソニックは,当初は,内部文書である等の理由を述べて,就業規則や契約書は出せない等と述べたが,最後は検討すると述べた(控訴人13頁)。
 しかし,その後,相手方パナソニックが,申立人に契約書や就業規則を渡すことはないまま、同日の「話し合い」の場で,相手方パナソニックのP●●は,申立人が直接雇用を選択したことを●●から聞いていると認めた(控訴人13頁)。

(3)相手方パナソニックの行為が信義則に違反していること

 もともと,申立人については,偽装請負から派遣に切り替えられ,派遣可能な受入期間を超過した後も,相手方パナソニックは申立人に直接雇用を申し込まないままであった。このように,申立人は,相手方パナソニックによって,違法な状況で働かされており,申立人の雇用は極めて不安定なものであった。
 しかし,相手方パナソニックは,申立人が同社の工場で働き始めた当初から,申立人に対し,長期間,安定して働くことができるかのような虚偽を伝えていた(甲41、2~3頁)。さらに,請負化計画を遂行する際にも,申立人に対してハイサイクル成形班のサブリーダーになることを要請するなど,長期間働き続けることを前提とした対応を繰り返していた。
 申立人は,相手方パナソニックのそれらの言葉を信じて,同社の正社員以上に働いた。過労死基準を遙かに超える長時間の残業,突然の休日出勤等にも,一言も文句を言わずに従ってきたのである。
ところが,2008(平成20)年10月24日,人員削減の発表により,申立人は,長期間,安定して働き続けることができるという話が虚偽であり,今後,相手方パナソニックで働き続けることができないことを知らされた。
 このため,申立人は,自らの雇用を守ろうと,福井労働局に申告して調査を求め,あるいは,労働組合に相談するなどした。
 その後,相手方パナソニックは,社外工を直接雇用することを避けるため,時給810円のアルバイトと,パナソニックの100%子会社である業務請負会社パナソニックエクセルプロダクツへの移籍による賃金の維持,という選択肢を提示し,社外工がパナソニックエクセルプロダクツに移籍するよう仕向けた。
 これに対し,申立人は,相手方パナソニックで働き続けたいという気持ちから,時給810円のアルバイトを選択し,相手方パナソニックも,申立人がその選択をしたことを伝えられ,認識した。
 ところが,相手方パナソニックは,申立人が労働組合に加入して,2009(平成21)年1月29日に労働条件の改善を求めて団体交渉を申し入れるや,申立人との間に労働契約が成立していることを否定して団体交渉を拒否するという,不当労働行為としか言いようのない対応をした。のみならず,相手方パナソニックは,同年2月2日には申立人に休業を命令して,申立人が工場で働くこともできないようにしたのである。
 その上,同年3月4日,申立人が,契約書に署名するために契約書を提出するよう求めたにもかかわらず,当初は契約書を提出することさえも拒否し,その後も,結局,申立人に契約書を渡さなかった。
 以上のとおり,相手方パナソニックは,申立人を直接雇用したくないという考えから,時給810円のアルバイトという非常識な提案をした。これに対し,申立人は,相手方パナソニックで働き続けたいという真摯な思いから,やむを得ず,労働条件の改善を求め続けることを留保しつつ,時給810円のアルバイトを選択し,その後,団体交渉を申し入れた。しかし,相手方パナソニックは,申立人が時給810円のアルバイトを選択したことを認識しつつ,雇用関係がないなどと虚偽を述べて団体交渉を拒否し,さらに申立人に休業を命令して,工場で働くこともできなくした。申立人が,それでも団体交渉を求め続けると,パナソニックは,「話し合い」であれば応じると述べたものの,「話し合い」の席では,申立人が求めた契約書の提出さえ拒否したのである。
 このように,申立人としては,工場で働くことも出来ず,団体交渉も拒否され,契約書の提出さえ拒否されたため,他に手段がないということで,やむを得ず,裁判に訴えざるを得なかったのである。そして,提訴後の同年3月末日,相手方ケイテムとの労働契約期間も終了したとして,相手方ケイテムからも排除されたのである。
 相手方パナソニックの上記のような対応は,相手方パナソニック自らが同社の正社員以上に働かせ続け,その能力を買ってサブリーダーを要請していたほどの申立人が,自らの権利を守るために行ったことに対し,一転して報復的に,申立人の労働の場を奪い,申立人との交渉さえも拒否するというものであって,申立人の勤労生活を著しく脅かす,信義にもとる行為と言わざるを得ず,信義則違反として,不法行為に該当し,損害賠償義務を負う。また,相手方ケイテムも,相手方パナソニックのこのような行為に加担したものとして,損害賠償義務を負う。
 原判決は不法行為の根拠となる信義則の内容をほとんど労働局の指導による短期間の契約の申し入れをもって終了させ、前記のような相手方らの信義則違反の行為について全く言及せず、不法行為の成立する余地もなく雇用安定をはかる義務違反はないとした解釈は誤っているから取り消されなければならない。

第4章 判例違反(318条1項前段)

第1 特段の事情の存在(PDP判決違反)

 松下PDP事件平成21年12月18日最高裁判決は、違法な労働者派遣契約の場合でも特段の事情があれば、派遣元事業主と労働者の雇用契約が無効となるとしている。
 本件は、派遣先事業主である相手方パナソニックが長年にわたって違法であることを認識している点、労働者に対する評価、配置などの判断を経て、生産計画に組み込んでいた点など、単なる違法派遣とは言い難いものである。
 同判決は,派遣労働者を保護する必要性なども考慮して,違法な労働者派遣でも派遣元と派遣労働者との雇用契約が無効になることはないと判示しているに過ぎない。そして特段の事情があるときは逆に派遣契約も無効となることを示唆する判例である。
 本件では,偽装した請負契約や労働者派遣契約の範囲を大幅に超えて就労させてきた事案であり,労働者の同意も得ずに労働者派遣契約に切り換えたなど相手方らの法規範無視の態度は同種の事案と比較しても際だっている。このような事実からすれば,違法の程度は極めて大きく,同判決にいう「特段の事情」にあたるというべきである。
 したがって、相手方らの契約関係を有効として申立人と相手方ケイテムとの雇用契約も有効とした原判決は前記判例に反している。

第2 労働契約の成立要件の団体交渉応諾義務を認定した判例違反

 前記のとおり、平成23年12月21日東京高等裁判所判決は、労働契約の成立要件として、賃金の確定、契約期間の確定を要せず、抽象的な賃金支払いと労務提供の合意で労働契約関係が成立するとして団体交渉応諾義務をもつ使用者に該当するとの判断を示したが、本件は、労働契約の本質的要素として賃金と期間の定めについての合意がなければ労働契約が成立していないとの判断を示し東京高裁平成23年12月21日付判決に反している。

第3、不法行為責任に関する判例違反

1 申告行為に対する一連の報復行為に関する損害賠償を認めた判例

 本件は、労働局の申告から労働組合への加入、直接雇用の条件交渉を求める団体交渉を求めた労働者が、直接雇用に応じられないまま、職場から排除された事案である。
 この点、職場に5ヶ月の有期契約となったものの、不必要な仕事に従事させられたこと、その後契約更新のないまま雇い止めになった一連の行為をもって不法行為の成立を認め損害賠償を認めた平成21年12月18日最高裁判決に反している。
 申立人の場合は、前記判例と対比しても労働局の申告行為と労働組合による団体交渉を放置し、その結果、直接雇用契約さえ締結に到らなかった点で、前記判例よりも悪質であり、損害賠償すら認めないのは最高裁平成21年12月18日判決に反している。

2 名古屋高等裁判所事案と判断

 本件は、請負化計画のなかで、安定した就労が保証されると期待しながら、経済環境の悪化によって容易に不安定な地位に置かれ、労働局に対し申告した結果、雇用の安定をはかる措置をとるよう指導されながら、わずか3ヶ月で時給810円という雇用条件の提案をしながら、直接雇用の要求を掲げて団体交渉をしたにも関わらず、これを無視して団体交渉も拒否し、最終的には申立人を就労させなかった行為が信義則に反している。
 この点を、派遣先事業主の派遣労働者に対する信義則上の損害賠償を認めた判例(名古屋高裁平成24年2月10日判決、なお同判決は平成24年10月12日に確定した)(甲48の1,2)に反した違法がある。

まとめ

 原審では、4年もの長期にわたって、仕事をしてきた結果、リーダーとしての就労までキャリアを積み上げた申立人が、理不尽な人員整理に抗して、相手方らの違法行為を摘発し、自らの雇用の安定を確保しようとして労働組合に加入したにも関わらず、要求にも交渉にも応じられないまま仕事を奪われてしまった申立人に対し、長年にわたって違法に申立人の労務を利用してきた相手方らが、負うべき負担(雇用継続の期待権の保護、直接雇用義務、均等待遇の保障など)を回避してきたにも関わらず、何ら責任を負わないという結論が示された。
 しかし、違法行為を重ねて来たものがまじめに仕事をしてきたものに対し、何ら責任を負わないという結論が容認されてしまえば、法秩序を維持することは出来ない。
 違法行為によって、労働者の利益が侵害されるようなことがあってはならないのであり、裁判所がそのような結果を招いてはならない。
 原判決には、民法623条労働契約法6条の解釈を巡り、労働契約の成立に関する重要な解釈上の誤りがある。また民法709条の解釈にあたって、長年にわたる労働者派遣法違反の結果、侵害された法益がないとした解釈の誤りを正す必要があるから、民事訴訟法318条1項後段に該当する理由があり、また同種事件において損害賠償請求を認めた判例にも反しているので、民事訴訟法318条1項後段に該当するから本申立を上告として受理すべきである。以上

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