パナ若狭「派遣切り」 働きたいのに働けない
パナソニック(本社・大阪府)が福井県敦賀市の若狭工場で行った「派遣切り」に対し、正社員化を求めた裁判の控訴審(9月26日、名古屋高裁金沢支部)で、原告の河本猛さん(34)=地域労組つるが組合員=への証人尋問が行われました。原告側弁護士による主尋問の主な内容を紹介します。(2012年10月6日・しんぶん赤旗)
控訴審 河本猛さんの証人尋問
−−あなたは、パナソニックでずっと働くことができると思っていましたか。
河本 思っていました。パナソニック正社員らから、長期間働いてほしいと言われていました。仕事も正社員と同じように働き、正社員と社外工の差を意識したことはありませんでした。
−−2008年10月、人員削減の話を聞いて、あなたはどうしましたか。
河本 おかしいと思い、福井労働局に調査を依頼しました。相談できる労働組合を探して、「地域労組つるが」に11月22日に加入しました。
−−人員削減の方針はその後、どうなりましたか。
河本 解雇は行われませんでした。パナソニックが労働局から(「偽装請負」による派遣可能期間の上限違反で)是正指導を受けていたと、後で分かりました。
直接雇用を選ぶなら810円
−−その後、パナソニックから雇用について、どのような説明がありましたか。
河本 09年1月16日、パナソニックの人事部長が、工場内の会議室で、①パナソニックで直接雇用の時給810円のアルバイト②パナソニック子会社の請負会社へ移籍し、賃金は維持③派遣会社への残留−−の三つの選択肢を示してきました。アルバイトについては映像と口頭で説明されました。1月23日までに派遣会社を通じて回答するよう指示がありました。
−−パナソニックの説明を聞いて、あなたはどうしましたか。
河本 1月21日、労働組合とで相談し、時給810円は不当な提案だが、直接雇用を選択して工場で働き続け、団体交渉を通じて正社員化や賃上げなど労働条件を改善しようということになりました。
−−アルバイトを選択することを誰に伝えましたか。
河本 派遣会社の社員に1月22日の夜勤前に伝えました。「①の直接雇用を選択します。ただし、今後の労働条件については、正社員化を求めるので、パナソニックに伝えてください」と言いました。その社員は「わかりました」と答えました。
正社員化求めたら契約拒否
−−正社員化を求めるためどうしましたか。
河本 「地域労組つるが」の北西(七郎)委員長、福井県労連の平澤(孝)議長と私の3人でパナソニックに対し団体交渉を申し入れました。パナソニックは、私と「雇用関係がない」と言って、団体交渉を拒否しました。直接雇用を選択したのだから雇用関係はあるのにおかしいと思いました。2月20日にも団体交渉を申し入れましたが、拒否されました。
その後、3月4日、パナソニックとの「話し合い」がありました。パナソニックから人事部長ら3人が出席しました。私は、直接雇用の契約書にサインするので契約書を出してほしいと言いました。パナソニック側は、はじめは「内部文書なので渡せない」と言い、抗議すると、「文書提出は検討する」と言いました。
3月25日、「地域労組つるが」からパナソニック人事部に電話し、契約書を提出してほしいと伝えました。会社側は「訴訟になったので、全面的な解決が図られない限り、あなたを働かせることはできない」と回答しました。
4月1日には、制服を持って出勤し、契約書の提出を求めましたが、就労も契約書提出も拒否されました。
−−時給810円のアルバイトの条件について、どう思いましたか。
河本 一人前の社会人として生活できない、結婚もできないと思いました。どうしても直接雇用にしたくないのだと思いました。
−−パナソニックに対して裁判を行うことを決意したのは、どうしてですか。
河本 団体交渉を拒否され、突然、私には何の権利もないかのような扱いをされ、つらい思いをしました。正当な地位を回復して働きたかっただけです。
−−パナソニックの工場で働き続ける意思は今でもありますか。
河本 あります。本来なら、働いて自分の賃金で生活できるはずです。今のままでは働かせてもらえず、不安や心配だけで何の展望も見えません。
裁判に至る経過
河本さんは、パナソニック若狭に2005年2月から4年以上勤務していました。仕事の実態は派遣なのに、請負と偽る「偽装請負」で、派遣可能期間の上限3年を超えて働かされていました。
福井労働局から是正指導を受けたパナソニックが河本さんに示した直接雇用の労働条件は時給810円のアルバイトでした。このため、河本さんは直接雇用に応じつつ、労働条件を正社員に改善するよう団体交渉を申し込んだところ、就労も団交も拒否され、解雇されました。
控訴審 河本猛さんの証人尋問
−−あなたは、パナソニックでずっと働くことができると思っていましたか。
河本 思っていました。パナソニック正社員らから、長期間働いてほしいと言われていました。仕事も正社員と同じように働き、正社員と社外工の差を意識したことはありませんでした。
−−2008年10月、人員削減の話を聞いて、あなたはどうしましたか。
河本 おかしいと思い、福井労働局に調査を依頼しました。相談できる労働組合を探して、「地域労組つるが」に11月22日に加入しました。
−−人員削減の方針はその後、どうなりましたか。
河本 解雇は行われませんでした。パナソニックが労働局から(「偽装請負」による派遣可能期間の上限違反で)是正指導を受けていたと、後で分かりました。
直接雇用を選ぶなら810円
−−その後、パナソニックから雇用について、どのような説明がありましたか。
河本 09年1月16日、パナソニックの人事部長が、工場内の会議室で、①パナソニックで直接雇用の時給810円のアルバイト②パナソニック子会社の請負会社へ移籍し、賃金は維持③派遣会社への残留−−の三つの選択肢を示してきました。アルバイトについては映像と口頭で説明されました。1月23日までに派遣会社を通じて回答するよう指示がありました。
−−パナソニックの説明を聞いて、あなたはどうしましたか。
河本 1月21日、労働組合とで相談し、時給810円は不当な提案だが、直接雇用を選択して工場で働き続け、団体交渉を通じて正社員化や賃上げなど労働条件を改善しようということになりました。
−−アルバイトを選択することを誰に伝えましたか。
河本 派遣会社の社員に1月22日の夜勤前に伝えました。「①の直接雇用を選択します。ただし、今後の労働条件については、正社員化を求めるので、パナソニックに伝えてください」と言いました。その社員は「わかりました」と答えました。
正社員化求めたら契約拒否
−−正社員化を求めるためどうしましたか。
河本 「地域労組つるが」の北西(七郎)委員長、福井県労連の平澤(孝)議長と私の3人でパナソニックに対し団体交渉を申し入れました。パナソニックは、私と「雇用関係がない」と言って、団体交渉を拒否しました。直接雇用を選択したのだから雇用関係はあるのにおかしいと思いました。2月20日にも団体交渉を申し入れましたが、拒否されました。
その後、3月4日、パナソニックとの「話し合い」がありました。パナソニックから人事部長ら3人が出席しました。私は、直接雇用の契約書にサインするので契約書を出してほしいと言いました。パナソニック側は、はじめは「内部文書なので渡せない」と言い、抗議すると、「文書提出は検討する」と言いました。
3月25日、「地域労組つるが」からパナソニック人事部に電話し、契約書を提出してほしいと伝えました。会社側は「訴訟になったので、全面的な解決が図られない限り、あなたを働かせることはできない」と回答しました。
4月1日には、制服を持って出勤し、契約書の提出を求めましたが、就労も契約書提出も拒否されました。
−−時給810円のアルバイトの条件について、どう思いましたか。
河本 一人前の社会人として生活できない、結婚もできないと思いました。どうしても直接雇用にしたくないのだと思いました。
−−パナソニックに対して裁判を行うことを決意したのは、どうしてですか。
河本 団体交渉を拒否され、突然、私には何の権利もないかのような扱いをされ、つらい思いをしました。正当な地位を回復して働きたかっただけです。
−−パナソニックの工場で働き続ける意思は今でもありますか。
河本 あります。本来なら、働いて自分の賃金で生活できるはずです。今のままでは働かせてもらえず、不安や心配だけで何の展望も見えません。
裁判に至る経過
河本さんは、パナソニック若狭に2005年2月から4年以上勤務していました。仕事の実態は派遣なのに、請負と偽る「偽装請負」で、派遣可能期間の上限3年を超えて働かされていました。
福井労働局から是正指導を受けたパナソニックが河本さんに示した直接雇用の労働条件は時給810円のアルバイトでした。このため、河本さんは直接雇用に応じつつ、労働条件を正社員に改善するよう団体交渉を申し込んだところ、就労も団交も拒否され、解雇されました。
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