パナソニック若狭工場事件、控訴審・準備書面(1)、陳述書

2011年(ネ)第259号 地位確認等請求控訴事件
控訴人  河本猛
被控訴人 パナソニックエレクトロニックデバイスジャパン㈱ 外
控 訴 人 準 備 書 面 (1)                        
2012年4月9日
名古屋高等裁判所金沢支部 御中

控訴人訴訟代理人
弁護士 海道宏実
同  吉川健司
同  村田浩治
同  河村学

第1 予備的主張(控訴人と被控訴人PEDJとの明示の労働契約の成立)の補充

 1 2009(平成21)年1月16日ー被控訴人PEDJによる控訴人への直  接雇用の申し込み

2009(平成21)年1月16日,被控訴人PEDJの●●人事部長は,控訴人を含めた社外工に対し被控訴人PEDJ工場内会議室において説明会を行い,福井労働局の指導を受けて,①被控訴人PEDJでの直接雇用(アルバイト・時給810円),②パナソニックグループの会社であるパナソニックエクセルプロダクツ株式会社への採用,③被控訴人ケイテム残留,の3つの選択肢を提示した。その際,文書は交付されなかったが,①については,概ね乙A3号証のような内容が説明会の席上でプロジェクターを用いて映し出され,説明された。なお,今後の手続について,被控訴人PEDJは,同年1月23日までにどれを選択するかを被控訴人ケイテムに回答するよう求めた(甲44p3,河本供述p29,30)。
これは,被控訴人PEDJが控訴人に対し時給810円のアルバイト等概ね乙A3に記載された労働条件での直接雇用を申し込んだと評価できる。

 2 同月22日ー1に対する控訴人による異議を留めた承諾

   これに対し,控訴人は,同月22日,被控訴人ケイテムのKB福井事業所長からの督促に応じて,①の選択肢,すなわち被控訴人PEDJの社員として直接雇用されることを承諾する意思を同人に対し回答するするとともに,今後の労働条件については異議を留めた。同人は,控訴人の回答内容を了解し,自ら被控訴人PEDJに伝える旨返答した(甲44p4,河本供述p30,31)。
これは,被控訴人PEDJから控訴人に対する直接雇用の申し込みに対し,控訴人が求められた回答方法と期限のとおり,被控訴人ケイテムに対し労働条件については異議を留めつつ直接雇用を承諾したと評価できる。そして,被控訴人ケイテムは,控訴人の承諾の意思表示を被控訴人PEDJへ伝達することを約束した。

 3 その後の被控訴人ケイテムによる承諾の意思表示の伝達

   被控訴人ケイテムのKB福井事業所長は,同年2月13日,被控訴人PEDJ工場内において,自らが控訴人の異議を留めた直接雇用承諾の意思表示を期限までに被控訴人PEDJへ報告したことを認めていた(甲44p6)。

 4 同年3月4日ー控訴人による承諾の意思表示を被控訴人PEDJが自認

   同年3月4日,控訴人らと被控訴人PEDJとの間で話し合いがなされ,その中で被控訴人PEDJの●●氏は,控訴人による異議を留めた直接雇用の承諾の意思表示を被控訴人ケイテム担当者を通じて期限内に聞いていたことを認める発言をしていた(甲44p9)。

 5 その後の控訴人による被控訴人PEDJへの直接雇用履行請求と被控訴人PEDJの拒否

   控訴人は,直接雇用の際の労働条件協議が未了であったことから,3月25日,組合を通じて電話で被控訴人PEDJに対し,改めて直接雇用を異議を留めて承諾したことを伝えた上で,契約書に署名捺印するために契約書の提出を求めた。ところが,被控訴人PEDJは,本件訴訟提起を理由にこれを拒否した。
さらに,労働組合が団体交渉を求めたところ,代理人間の交渉であれば応じる旨の意向が組合から伝えられたため,控訴人代理人村田弁護士から被控訴人PEDJ代理人山浦弁護士に同月30日に電話連絡を行い,被控訴人PEDJとの労働契約について,労働条件の詳細については異議を留めた上で,契約には合意をして就労を維持した上で,控訴人の被控訴人PEDJでの雇用・就労条件について協議したい旨述べた。その上で,同月31日,控訴人代理人村田弁護士から改めて書面(乙A10)を同月31日にファックスで送付し,念のため同一の文書を被控訴人PEDJ及び同代理人山浦弁護士に対し内容証明郵便で送付し,同書面は同年4月1日に到達した。
   ところが,被控訴人PEDJは,控訴人の直接雇用を拒否し続け,控訴人は被控訴人らから排除されるに至った(甲44p10)。

第2 黙示の労働契約の成立に関する主張の補充

 1 労務管理

業務日誌(甲45)は,被控訴人PEDJの社員として控訴人が所属するハイサイクル成形班を含む成形班を統括していたPB氏と被控訴人ケイテムの社員として被控訴人PEDJを担当していたKA氏,被控訴人ケイテムの派遣社員SA氏が打ち合わせを行っていた内容をPB氏が記録したものである。
これによれば,6月20日の打ち合わせの課題欄に「会社側(注 被控訴人PEDJ)から勤務表を出してもらい(個人都合の休み確認も含む),勤務管理する。社外工が休む場合は,必ずケイテムに連絡するように・・・PB依頼※会社都合と個人都合の管理をして頂くため」と記載されている。
この記載からすれば,それまで被控訴人ケイテムは,派遣労働者が休む際に会社都合か個人都合かを把握していなかったこと,派遣労働者が休む場合に被控訴人ケイテムには連絡していなかったこと,被控訴人ケイテムがこのような基本的な事項についてすら勤務管理していなかったことが認められる。

 2 賃金決定への関与

同じく業務日誌(甲45)によれば,6月18日の打ち合わせの課題欄に「1~2日の出勤調整は,理解出来るが5日になれば給料保証して欲しい。原則は,会社カレンダーの分の出勤は契約しているはず。」と被控訴人ケイテムのKA氏とSA氏が被控訴人PEDJのPB氏に対し求めた旨が記載されている。そして,これを受けた同月20日の打ち合わせの課題欄に「KA氏からは,具体的な内容(保証)については,ケイテム側から連絡する。」と記載されている。
   この記載からすれば,それまで被控訴人ケイテムは,会社都合,すなわち被控訴人PEDJの都合による休みがあっても全く保証がなされず,そのまま派遣社員には給料が支払われていなかったことが窺われ,被控訴人PEDJが控訴人を含めた被控訴人ケイテムの派遣労働者の賃金決定に関与していたことが認められる。
以上


陳 述 書 2

氏 名  河本猛

 この陳述書では,私が,PEDJによる直接雇用を求め,さらに直接雇用における労働条件改善のために団体交渉を求めた経緯等について述べます。

1 直接雇用を求めた経緯
(1)2007年の10月ころ,PEDJの正社員との会話で,PEDJが私の所属するハイサイクル成形班等の業務を,PEDJからの業務請負の形式で,社外工だけが担当するように計画していること(以下,「請負化計画」といいます。)を知りました。
   その後,組立班にいたケイテムのSAさんから「PEDJ正社員の●●氏・●●氏・PB氏から,SAさんに請負の工程リーダーになって欲しいと要請されたので,11月から成形班に移動する」ということを聞き,PEDJによる請負化計画が本当に進んでいるのだと実感しました。
(2)そして,2008年2月ころ,ケイテムから,私の所属するハイサイクル成形班等の業務を,請負として社外工に担当させるように変更するという請負化計画が発表されました。
   その後,ハイサイクル成形班では,PEDJの正社員が,SAさんに対しハイサイクル成形の工程のリーダーとなれるよう養成するための教育を行いつつ,業務上の指示も行っていました。
   また,私は,請負化計画において,PEDJのPB氏,PC氏から,君には,工程のサブリーダーや,金型切替の業務を担当してもらいたい,期待している,と言われました。PEDJから請負化された後も重要な仕事を担当してもらいたいと言われて,私も期待されていると感じ,今まで以上に仕事に力を入れました。
   しかし,その後,工程のリーダーになることが予定されていたSAさんが2008年9月に退職したこともあって,社外工に業務を請け負わせるという請負化計画は遅れました。
   その後,2008年10月24日,ケイテムは,私が所属するハイサイクル成形班のケイテムの作業員に対し,請負化計画を中止した上で,人員削減するという話を,突然発表しました。
   そして,業務態勢は,以前と同様に,PEDJの正社員がリーダーとして業務を行う体制に戻りました。
   私は,PEDJの請負化計画,その突然の中止と人員削減の発表という一連のやり方はおかしいと思いました。そのため,2008年10月下旬ころに,福井労働局職業安定課に電話で連絡して,PEDJやケイテムの請負化計画や前記のようなやり方の問題点について調査をお願いしました。そこの職員の方は,私の話を真剣に聞いてくれて,11月初めころに,PEDJやケイテムの調査を行うと話してくれました。
(3)2008年11月5日,PEDJの正社員(係長)のPB氏が,今後は派遣社員との契約更新はしないと発言しました。
   PB氏のこの発言を聞いて,私は,このまま何もしないでいれば首にされてしまうと思いました。そこで,相談できる労働組合がないかといろいろ探して,「地域労組つるが」という労働組合を見つけ,そこに上記の経過を相談し,私たち社外工がPEDJで長時間働き,長年にわたって就労してきた実態も話しました。そして,2008年11月22日には,「地域労組つるが」に加入しました。
   その後,2008年11月末と12月1日に,ケイテムのKA氏から,私たちに対し,2009年1月末までに在籍人員調整をするとの話がなされ,その際に「生産減少に伴うアンケート」を配布されました。
(4)その後,正確な日付は後で知りましたが,2008年12月18日,福井労働局からPEDJとケイテムに対して,労働者派遣法違反があるとして,是正指導が行われました。
   是正指導を受けたためだと思いますが,12月25日,ケイテムのKA氏は,12月末と2009年1月末に解雇を予定していた私たちに対して,その予定を撤回すると伝えてきました。
(5)2009年1月16日,福井労働局の是正指導を受けたからだと思いますが,PEDJの●●人事部長が,私たち社外工に対し,PEDJの工場内の会議室において,プロジェクターでスクリーンに映しながら,①PEDJでの直接雇用(アルバイト・時給810円),②パナソニックグループの請負会社であるパナソニックエクセルプロダクツ株式会社(以下,「PEP」といいます。)へ移籍(賃金はこれまでの金額を維持する),③ケイテムへの残留,の3つの選択肢を示してきました。
   実際に映像で示されたものは,PEDJが提出した乙A3のようなものだけで,②,③は口頭での説明だけでした。また,1月23日までに,ケイテムにどれを選ぶのか回答するように,とも言っていました。
   私は,映像で示されたり,口頭での説明だけでは十分に検討できないので,書面にして渡してほしいと伝えました。
   しかし,その後,PEDJから書面で渡されたことはありません。
(6)私は,1月21日,PEDJの上記の行為に対し,どのように対応すべきかについて,「地域労組つるが」の執行委員長北西七郎さん,福井県労連議長の平澤孝さんと相談しました。
   そして,相談の結果,PEDJの①の選択肢は,私が直接雇用を選択することを断念させるための不当なものであるが,私の雇用の維持のため,①を選択しつつ,労働条件については,団体交渉を通じて改善を勝ち取るという方針を取ることに決めました。
(7)私は,翌日の1月22日午後8時ころ,夜勤の出勤前に,工場のロッカー室の前で,ケイテムのKB氏から「パナソニックから示された選択肢のどれを選ぶんですか。まだ聞き取れていないのは河本さんだけですよ。」と話しかけられました。私は「回答するための用紙などはないんですか」と尋ねました。KB氏は「そのような用紙はないので,私が河本さんから聞き取って,パナソニックに伝えます。」と言われました。それで,私は「それなら,①の選択肢,PEDJによる直接雇用を選択します。ただし,今後の労働条件については,アルバイトではなく正社員として雇ってもらうことを求めるので,そのことをパナソニックに伝えてください」と伝えました。KB氏は「わかりました。パナソニックに伝えておきます。」と答えました。KB氏との会話はそれで終わりました。
   その後の2月13日,KB氏から,私が直接雇用を選択したことを,KB氏がPEDJに伝えたということを聞きました。
(8)2009年1月28日,私は,ケイテムのKB氏から,「2008年11月1日~2009年1月31日」「2009年2月1日~3月31日」の2枚の契約書にサインするよう求められました。それまでの間(2008年11月15日からの間),私は,契約書がないままPEDJで働いていました。また,PEDJも契約を更新しないと言いながら現在まで働かせていました。さらに,2008年11月15日までの契約書(乙B2の9)が存在するのに,その時の契約書は2008年11月1日から始まるものだったので,不自然に感じました。そのため,私は,サインをする必要はないと考え,サインを拒否しました。その他,期間をさかのぼっての契約書にはサインしないことも伝えました。
   しかし,KB氏は,契約書がなければ,来月からPEDJが就労を拒否してくる可能性があること,PEDJは来月も仕事に来て欲しいと言っているが,契約書がないと給料が支払われない可能性があること,仕事がなくなり休業状態になった場合にPEDJが休業補償してくれない可能性があること,契約書がないと本人に不利になること,等を言ってきました。
   その日の就労開始10分前である20時20分ころにいきなり言われ,話している内に,就労時間も過ぎたので,書類の内容を細かく確認したり,誰かに相談したりすることもできないまま,「2009年2月1日~3月31日」の契約書にはサインをしました。ただ,サインをした後,業務内容が実際とは異なっており,書式もこれまでとは違っていたので,すぐにサインの撤回を伝えました。しかし,契約書は返してもらえませんでした。
   翌日も,ケイテムのKB氏と,その事について話をしましたが,KB氏は個人の預かりとして契約書を保管させて欲しいと譲らず,契約書は返してもらえませんでした。

 2 PEDJに対する団交の申入れとPEDJによる団交拒否
(1)2009年1月29日,「地域労組つるが」の執行委員長北西七郎さん,福井県労連議長の平澤孝さん,私の3名で,PEDJに対し団体交渉の申入れを行い,私について,正社員として雇用すること,私の労働条件について,正規社員と同様の労働条件とすることを求めました(甲9,10)。
   当時の私の一番の思いとしては,ハイサイクル成形班で働く人全員がPEDJの正社員となっており,派遣法違反をしているPEDJに落ち度があるのであって,自分は何も違法なことをしていないにもかかわらず,ハイサイクル成形班で働いていた自分が正社員として働けず低賃金の労働者とされるのはおかしいというものだったからです。
   ところが,PEDJは,私との間に雇用関係がないので,団体交渉には応じられないと述べて,団体交渉に応じようとしませんでした。私は,PEDJが違法なことをしているのに団体交渉に応じないのはおかしいと思いました。
(2)翌日の1月30日,ケイテムのKB氏は,私に対し,PEDJが,①別部署で作業をする,②同部署で別作業をする,③休業,の3つの選択肢を提示してきている,すぐに返事がほしい,と迫ってきました。
   私は,すぐには返答できない,これまでと同様に働き続けさせてほしいと答えました。また,出勤した時に偶然にもKA氏に会ったので,私は,KA氏に,前記①ないし③のどれかを選択しなければならないようなことを誰が言っているのか,と尋ねました。すると,KA氏は,PEDJの入力デバイス製造チームリーダーの●●氏が言っていると答えました。これを聞いて,ケイテムはPEDJの方針を形式的に伝えているだけだと感じました。
   その後,2009年2月2日,ケイテムのKB氏から私に対し,1月30日に提示した選択肢の返答がないのであれば,2月から休業してもらうことになる,との命令が伝えられました。
(3)2009年2月13日,PEDJの工場内において,ケイテムのKB氏から私に対し,ケイテムは2009年3月31日付けでPEDJから撤退するので,当日に配布された今後の処遇についてのアンケートである「お願いとアンケート」の返事が欲しいと言ってきました。
   これに対し,私は,「地域労組つるが」の北西さんと一緒に,若狭工場のロッカー室のある建物において,ケイテムのKB氏と●●氏と会い,PEDJによる正社員としての採用を求めていくので,アンケートには回答しないと伝えました。
   その時,KB氏は,ケイテムからPEDJに対し,私が1月22日にPEDJによる直接雇用を選択したこと,さらに正社員としての直接雇用を求めている旨の回答をしたことを,期日までに報告していると言っていました。また,請負化計画が実施できなくなり,ケイテムがPEDJから撤退させられることについても,不本意であると述べていました。
   さらに,ケイテムの●●氏は,河本さんがPEDJの正社員として直接雇用されることを望んでいます,とも述べていました。
(4)2009年2月20日,改めて,「地域労組つるが」として,PEDJに対し団体交渉を申し入れ,私をPEDJの正社員として雇用すべきであると伝えました。また,私のアルバイトとしての直接雇用の労働条件を具体的に明らかにしてほしいと伝えました。
   しかし,この時も,PEDJは,以前と同じく,私とPEDJとの間に雇用関係がないとの理由で「地域労組つるが」との団体交渉を拒否しました。

 3 2009年3月4日の出来事について
(1)2月20日の団交申入れに対するPEDJの返答
   PEDJは,2月20日の団交申入れに対し,団体交渉ではなく「話し合い」であれば,3月4日に話を聞く機会を設けると伝えてきました。
   私たちは,PEDJが団交ではないとしていることに不満はありましたが,PEDJと,私の労働条件について交渉することが最優先であると考え,PEDJとの「話し合い」の席に出席することにしました
(2)3月4日の相手方とのやり取り
  ア 3月4日の「話し合い」においては,最初に,私,北西さん,平澤さんから,私の直接雇用の労働条件を具体的に明らかにすること,就業規則を明らかにすること,PEDJに対する是正指導の内容を明らかにすること,を求めました。
    これに対し,PEDJの人事部長●●氏は,今回の「話し合い」は,雇用条件の説明会を再度行うということであると述べて,私のPEDJによる直接雇用の労働条件について,次のような説明をしました。①雇用は3か月単位の有期契約で,最大で2年11か月であること,②業務はそれまでのハイサイクル成形班から離れてもらい組立・運搬を担当してもらうこと,③労働時間は8時30分から17時までで,交代制もあること,④賃金は時給810円,残業は25%増,深夜勤務は35%増,通勤手当は月1万3000円,ボーナス,退職金,企業年金はないこと,⑤休日は土・日・祝日,年休は6か月勤務後に10日間,夏期に10日間の年休,年末年始は12月30日から1月4日が休日であること,⑥社会保険への加入は保障すること,⑦その他,福利厚生,教育訓練は正社員と同じであること,という説明でした。
    次に,PEPにおける労働条件について,現時点の私の賃金額を維持すること等を説明しました。
    そして,上記の説明後,私に対し,以上の条件を検討した上で,どちらかを選択するようにと言われました。
    これに対し,私たちは,1月16日には「アルバイト」と言っていたのに,今回は「契約・期間工」となっており,どのような違いがあるのかと尋ねた上で,文書で提出しないから分かりにくくなること,雇用条件について文書で提出することを改めて求めました。
    PEDJは,「アルバイト」も「契約・期間工」も同じである,文書で提出することは検討する,との回答をするに留まりました。
  イ 次に,私たちは,私以外に,PEDJによる時給810円の直接雇用を選択した者がいるのかどうか,若狭工場において,PEDJによる直接雇用で働いている人の中に,時給810円のアルバイトがいるのかどうか,時給810円という金額はどのようにして決めたのか,について確認しました。
    これに対して,PEDJは,時給810円の直接雇用を選択した者は,私以外にはいないこと,若狭工場には,現在は正社員しかいないこと,今後,嘱託や契約社員の導入を検討すること,時給810円は,最低賃金,パート時給,派遣料金などを考慮して決めた,と述べました。
  ウ さらに,私たちは,PEDJが直接雇用の申入れを行った理由について尋ね,PEDJは,労働局の是正指導に基づいて行ったことを認めました。
    そこで,私たちは是正指導書を提出することを求め,また,派遣法において,直接雇用を申入れる場合,従来の労働条件を低下させないことが定められていることを伝えて,私の直接雇用の労働条件を改善することを求めました。
    しかし,PEDJは,是正指導書の提出も,私の労働条件の改善も拒否しました。
  エ 次に,PEPへの移籍に関し,業務請負を行う業者がケイテムからPEPに変更された理由を尋ねました。
    これに対し,PEDJは,是正指導に基づいて行おうとして,ケイテムも含めて検討した結果,PEPになったと答えました。
  オ さらに,私たちは,1月16日に提示された選択肢について,PEDJによる直接雇用の時給とPEPによる雇用の時給が同じにならない理由を尋ねました。
    PEDJは,それぞれの会社の方針なので時給は同じにならないこと,PEPの時給は,パナソニックのグループ会社として協力をいただいた結果であると述べました。
  カ 次に,私たちは,1月22日に私が労働条件に異議をとどめたままPEDJによる直接雇用を選択することをケイテムのKB氏に伝えたことを聞いているかどうか尋ねました。
    PEDJの●●氏は,連休明けにケイテムの担当者から聞いていると答えました。
    私は,ケイテムの担当者から聞いているのであれば,自分がPEDJの労働者であることは明らかなのであるから,団交に応じるよう求め,また,口頭でのやり取りは問題が多いので,契約書を書面で出すように求めました。
  キ 以上のようなやり取りをして,3月4日のPEDJとのやり取りは終わりました。

 4 その後の経緯
(1)3月6日,私は,PEDJに対して,正社員としての雇用関係があることの確認を求め,また,PEDJとケイテムに対して,慰謝料を請求する訴訟を起こしました。
(2)3月4日の後,PEDJからの回答がないので,3月25日,私は,「地域労組つるが」の北西さんを通じてPEDJの人事部に電話し,改めて,PEDJによる直接雇用を選択したこと,労働条件については異議を留めることを伝え,また,直接雇用の労働条件を明示した契約書に署名捺印をしたいので,契約書を提出してほしいと伝えました。
   すると,電話に出た人は,訴訟になったので,全面的な解決が図られない限り,私を若狭工場で働かせることはできないと回答したそうです。
(3)その後,PEDJの代理人の弁護士から私の代理人だった村田弁護士宛に,私のPEDJでの雇用・就労条件について協議したい旨の連絡があったと聞いています。そして,これに対し,村田弁護士が,3月30日,「当面は貴社からの条件に対し異議を留めた上で,就労する意思がある」ことを通知し,また,労働条件については今後協議したいと伝えたと聞いています。
(4)4月1日,私と北西さんは,若狭工場を訪れ,人事チームリーダーの●●氏と会いました。そして,団交に応じること,契約書を書面で出すこと,私を就労させること,を求めました。
   ●●氏は,裁判になったので代理人同士の話し合いでお願いしたい,団交は,直接雇用していないので応じられない,と述べるだけでした。

5 最後に
  私は,PEDJ若狭工場の従業員として安定して働き,今後も安定した仕事が約束されていました。それは,PEDJの正社員が「今後,成形班から自分たちはいなくなる,これからは君たちだけで成形工程を運用することになる」といっていたからです。
  PEDJが社外工と呼んでいる私たちがいつ辞めるかもわからない不安定な労働者であるなら,PEDJは,私たちの請負化を図り,技術を伝承する教育を行うことはなかったはずです。PEDJは,私たちを常用で働く労働者として扱って,これからもずっと若狭工場で働かせるために,私たちに個別に技術を伝承する教育をしました。
  それを突然中止して私たちを職場から追い出し,成形班はPEDJの正社員だけにするというのは騙し討ちです。
  その後,福井労働局が,PEDJとケイテムに対し,私たちの雇用の安定を図るように是正指導を行いました。
  ところが,私が働いていた成形班はPEDJの正社員だけとされ,私たち社外工に申し込まれた雇用条件は,雇用の安定とはほど遠い,これまでの就労実態からは想像できない低賃金かつ不安定な労働条件でした。これは私が違法行為を告発したことへの報復,差別としか思えません。ですから,私は,PEDJが提示した直接雇用を選んだ際に,労働条件は正社員と同じにするよう求めたのです。
  生きていくためにはなにより働くことが大事ですから,私は働くことを拒否したことはありません。私は,働きながら,労働条件が正社員と同じになるよう団体交渉を続けていくつもりでした。そして,PEDJが提示する810円の雇用契約書に署名捺印するため,何度も雇用契約書の提出を求めました。しかし,PEDJから雇用契約書が提出されることはなく,私は,雇用契約書に署名捺印することができませんでした。
  そのようなことをしておきながら,PEDJは,私たちとの団体交渉を拒否する際には,私とPEDJとの間に「直接雇用関係がないから」と言っていました。
  結局,PEDJは,書面で証拠を残さないよう雇用契約書の提出を拒み続けておきながら,一方で,あたかも私が就労を拒否したかのように見せかけ,さらに団体交渉を拒否する際には「直接雇用関係がない」などと主張したわけで,私に責任があるかのように偽る一連の対応は卑劣すぎます。
  結局,交渉では解決しそうになかったため,やむを得ず,私は裁判を選択しました。
  ところが,原判決は,私のPEDJの労働者としての地位を認めませんでした。これは,偽装請負や違法派遣で働かされても,労働者は保護されない,といわれたも同然です。
  私は,PEDJの為に過労死基準を超えてまで誠心誠意働いてきたのに,上記のような卑劣な対応を受けました。その上,裁判によって救済して欲しかったのに,福井地裁の判決はさらに私を奈落の底に落とす判決でした。
  このような判決がまかり通るのであれば,派遣や請負という形式で働く場合,無権利状態を我慢しなければならなくなる以上,私は,派遣や請負という形式で働き続けることは,とてもできるものではありません。
  しかし,現在,新卒の学生でさえもなかなか正社員になれない状況の中で,会社の違法行為を告発し,裁判まで起こした私を正社員で雇ってくれる会社はありません。
  結局,私は,働きたくても安心して安定的に働ける仕事はなく,しかし,働かずに生計を立てることも不可能な状態であり,将来の展望が見いだせません。たまに,病気にでもなって,早く死んだ方がいいのではないかとさえ思ってしまいます。
  また,今では,会社の違法行為を告発したことに対する後悔の気持ちも生まれています。もし,私が違法行為を告発するようなことをしていなければ,解雇されずに引き続き働くことができていたかもしれませんし,いったん解雇されたとしても,数か月後に,若狭工場は,人員を大募集していたので,それに応募して,容易に再雇用されていたでしょう。違法行為に目をつぶり,数か月間我慢していれば,PEDJから何ら卑劣な対応を受けることもなく,安定して働くことができたのではないかと思ってしまいます。
  違法行為を是正しようとした私がひどい目にあうというのが裁判であるというのであれば,裁判所に正義はないと思います。
  私が,人間らしく働いて生活できるようになるためにも,福井地裁判決が破棄され,私がPEDJの職場に復帰できるような判決をお願いいたします。
以 上



平成23年(ネ)第259号
控訴人  河本猛
被控訴人 パナソニックエレクトロニックデバイスジャパン㈱ 外

証 拠 申 出 書

名古屋高等裁判所金沢支部 御中

控訴人訴訟代理人弁護士  海  道  宏  実
   同      吉  川  健  司
   同      村  田  浩  治
   同      河  村     学

第1 本人尋問の申出
 1 控訴人本人の表示

             河 本   猛(同行・主尋問30分)
 2 立証の趣旨
控訴人主張事実全般
3 尋問事項
別紙尋問事項書記載のとおり

第2 証人尋問の申出
 1
(1)人証の表示
住所不明。被控訴人日本ケイテムが住所を開示しないため,記載できない。
KA氏(呼出・主尋問30分)
(2)立証の趣旨
   証人は,控訴人が被控訴人日本ケイテムに派遣社員として採用されるにあたり面接をし,その後も控訴人を担当し,被控訴人PEDJへ派遣された社員の派遣元責任者の地位にあったものであり,控訴人が被控訴人日本ケイテムに採用された経緯,控訴人と被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約の内容,被控訴人日本ケイテムによる控訴人ら派遣労働者に対する指揮命令,労務管理の有無,控訴人が被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約が終了した経緯等を立証する。
(3)尋問事項
別紙尋問事項書記載のとおり

 2
(1)人証の表示
住所不明。被控訴人日本ケイテムの方で住所を開示されたい。
KB氏(呼出・主尋問30分)
(2)立証の趣旨
   証人は,控訴人が被控訴人日本ケイテムに派遣社員として雇用されていた期間のうち遅くとも平成20年11月以降福井事業所長の地位にあったものであり,被控訴人PEDJから控訴人ら派遣社員に対し求められた3つの選択肢への控訴人の回答内容,その後の控訴人と被控訴人日本ケイテムとのやりとり,控訴人と被控訴人日本ケイテムとの労働契約終了の経緯,控訴人の賃金決定のあり方等を立証する。
(3)尋問事項
別紙尋問事項書記載のとおり
別紙 尋問事項

控訴人本人 河 本  猛
1 控訴人が被控訴人PEDJによる直接雇用を求めた経緯について
2 控訴人が被控訴人PEDJから求められた3つの選択肢に対し回答した内容と、これに対する被控訴人らの対応について
3 控訴人らが被控訴人PEDJに対し団体交渉を求め,拒否された経緯について
4 控訴人と被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約が終了するに至る経緯について
5 控訴人が被控訴人らから排除されるに至ったことにより被った精神的苦痛について
6 原審判決に対し不服な点について
7 その他本件に関連する事項一切

証人     KA氏
1 証人の地位について
2 控訴人が被控訴人日本ケイテムに採用され被控訴人PEDJで勤務するに至った経緯について
3 控訴人と被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約の内容について
4 証人が控訴人ら派遣労働者に対して指揮命令をしていたか,労務管理をしていたか
5 控訴人と被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約が終了するに至る経緯について 
6 その他本件に関連する事項一切

証人     KB氏
1 証人の地位について
2 証人は,控訴人から3つの選択肢に対する回答を聞いたか,その内容はどのようなものだったか。その回答を被控訴人PEDJに伝えたか。
3 控訴人と被控訴人日本ケイテムとの間の労働契約が終了するに至る経緯について
4 控訴人の賃金はどのようにして決定されていたのか。 
5 その他本件に関連する事項一切

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