“「派遣切り」に合ってしまった”(仕事・くらしのSOS)

Q 「派遣切り」に合いました。従うしかないのでしょうか?


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A 派遣労働者は、雇用契約を派遣会社と結び、その派遣会社が派遣契約を結んでいる派遣先企業で仕事上の指揮命令を受けて就業します。そのため、派遣元である派遣会社と派遣先である企業の派遣労働者への雇用責任などがあいまいになりがちです。賃金や労働時間、残業代の割増賃金、有給休暇などについては、派遣会社の責任となります。たとえば、「有給休暇は派遣先企業に了解を得なければとれない」などということは違法です。派遣先企業は、派遣労働者を特定したり、事前面接することはできません。
期間途中の解雇は許されない。賃金保障も要求できる
 派遣労働者であっても、労基法などの基本的な権利は当然守られなければなりません。

 派遣会社が派遣労働者と有期の雇用契約をしている場合、派遣先企業が派遣会社に対して契約を中途解約しても、ただちに派遣労働者と派遣会社との契約が終了するわけではありません。

 労働契約法第十七条では、期間の定めのある労働契約について、「やむを得ない事由がなければ契約期間中の解雇はできないとしています。期間の定めのない場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断をされます。その解雇が妥当かそうでないのかは、具体的な個別ケースごとに判断をされますので、あきらめずにたたかうことが大事です。

 あわせて、労働契約法十七条はその第二項で、「必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」としています。

 やむを得ず、解雇する場合でも、少なくとも三十日前までの予告が必要であり、予告をおこなわないときは解雇予告手当を支払わなくてはなりません。反復更新をしていた場合、裁判例では、解雇に関する法理の類推適用により雇い止めが認められない場合もあります。三回以上更新していたり、一年を超えて雇用されている場合などは、雇い止めが認められないケースもあります。

 派遣会社は、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」で、「(1)派遣元は、派遣契約の中途解除にあたって、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業を行い、派遣労働者の雇用の維持を図る。(2)やむを得ない事由により?ができない場合に、派遣労働者を解雇しようとするときでも、労働契約法の規定を遵守することはもとより、解雇予告・解雇予告手当の支払等、労働基準法等に基づく責任を果たすこと」とされています。派遣先企業についても、「派遣先事業主が構ずべき措置に関する指針」で、(1)「派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること」、これができない場合は少なくとも「休業手当、解雇予告手当等に相当する額以上の損害の賠償を行うこと」、派遣契約は「可能な限り長く定める」ように努めること、(2)契約解除の場合は、「派遣先企業の関連会社での就業をあっせんするなど新たな就業機会の確保を図ること」などとされています。

「原則一年」を超えれば、直接雇用の申し入れをしなければならない
 派遣労働は、「臨時的一時的な業務に限る」というのが法律の主旨で、国会答弁でもそれは繰り返し確認をされてきました。職業安定法や労働基準法は、雇用関係は雇用主と労働者の直接の関係に限定をしています。戦前あった人買業などを厳しく排するために、戦後禁止されてきました。しかし、一九八五年に成立した労働者派遣法によって、例外として、派遣労働が限定的に認められたものです。その後、九九年、二〇〇四年の法改正をつうじて、製造業をふくめて原則自由とされてきました。

 派遣可能期間には、上限が決められており、同一場所同一業務での派遣は、原則一年とされています(派遣法四十条の二)。職場の労働組合や過半数を代表とするものからの意見の聴取などを経れば、最大三年まで延長ができます。派遣先企業がこの派遣上限期間を超えて働かせようとする場合は、派遣労働者に、直接雇用を申し入れる義務が課せられています(前法四十条の四)。派遣労働者が入れ替わっていても、派遣先企業が派遣労働を受け入れた期間は通算され、上限期間を超えるときに働いている派遣労働者が直接雇用の対象とされます。ただし、専門業務や育児・介護休業中の代替として派遣される場合などは、派遣期間の上限はありません。

 専門業務については、現在、厚生労働省の政令によって二十六業務が決められていますが、この業務については、派遣期間の上限が二〇〇四年から撤廃され、無制限に派遣できるとなりました。ただし、この場合も、三年を超えて派遣されている場合に、その業務に人を雇い入れる際は、その派遣労働者に雇用契約の申込みをしなければなりません(派遣法四十条の五)。

 派遣労働者たちが、相談に訪れた際には、実際に、その派遣労働者が、どのような業務をどれほどの期間してきたのか、雇用契約書や給料明細などの書類とあわせて、実態をよく聞くようにしましょう。

 請負とみせかけて派遣先企業の社員が指揮命令している場合などは、「偽装請負」であり、“請負期間”も派遣期間として換算し、原則一年を超えていれば直接雇用の申込み対象となります。また、同一業務契約書の業務名だけを変えたり、期間制限のない専門業務で契約をしているのに実際はまったく違った業務をしているなどの「業務偽装」なども多発しています。派遣と派遣の間が三カ月+一日開いていれば、派遣期間が通算されないことを悪用した違法な「クーリング」については、直接雇用期間後に、再度派遣に戻すということがあらかじめ決められていたり、システムとしてそのような雇用管理がおこなわれていたりする場合は明確な職安法違反となり、直接雇用期間も派遣期間と換算されます。

申告や団体交渉などで直接雇用、正社員化も実現
 派遣法では、派遣労働者は厚生労働大臣、労働局長にたいして、違法状態の是正について「申告」をすることができます。労働組合に結集して、派遣先・元に団体交渉することと合わせて「申告」制度を活用しましょう。申告したことを理由として、解雇などその他の不利益扱いは禁止されています(派遣法四十九条の三)。労働局は申告されたら、最優先課題として、派遣先企業などに調査をおこなうこととなり、違法が認められれば、「雇用の安定を前提に、直接雇用や適正な請負に切り替えるよう」などとの指導・助言、口頭で直接雇用を促すことなどがおこなわれます。厚生労働大臣は、違法や違法の恐れがある場合は、指導・勧告、公表をする権限があります。
 大阪では、東海ロジテムで四年半以上働いてきた派遣労働者が、労働組合での団体交渉と申告をつうじて、正社員となっています。愛知では、東海ゴム(住友系列)とその子会社のTRIで一月に派遣切りされた労働者らが申告と団体交渉でたたかい、労働局の指導もあり、直接雇用の申し入れがおこなわれ、当初の「雇用期間六カ月の期間社員で最大一年」とする提案について団体交渉するなかで、「一年後、生産量があれば切らない」とさせました。

 派遣法四十条の四の直接雇用申し込み義務について、「(派遣期間の上限の抵触日以降は派遣しないという派遣元の)派遣先への通知が前提なので、派遣先の直接雇用の義務は生じない」という主張に固執している労働局もありますが、国会審議では、「(違法なことをして)期間制限の抵触日がこないようにしていたケースなのだから、通知を出すわけがない。直接雇用を指導しないのは派遣法の機能不全だ。雇用が維持される方向に労働行政は厳しく臨んでいくべき」と質問したことに対し、厚生労働大臣は「その方向でさらに厳しい指導を行いたい」とのべています(六月九日。参議院厚生労働委員会での小池議員の質問)。党としても各地の労働局に迅速・適正な対応を要請することも求められます。

 派遣期間について、その業務についての派遣受け入れ期間の上限の抵触日はいつであるのかは、そもそも派遣法二十六条で、派遣先企業が派遣元へ通知するとされています。派遣会社や派遣社員は入れ替わる可能性があり、抵触日は派遣先企業にしか特定できないからです。手続きを経て延長された場合も、派遣先企業は派遣元に通知をしなくてはなりません。派遣法四十条の四の派遣先企業の「直接雇用申込み」義務の前提とされている派遣元による派遣先への通知は、派遣先企業が設定した抵触日にもとづいてのものであり、さまざまな手法でその抵触日を免れるように偽装することは、派遣法と職安法への重大な違法行為です。企業の雇用責任が鋭く問われます。

 なお、直接雇用する場合に、派遣のときよりも賃金などが低く設定されたアルバイトや契約社員などを提示されたというケースもありますが、派遣法では、「直接雇用にするさいには、派遣労働者との労働条件を勘案して決めることが求められる」(『派遣法業務取り扱い要領』)とされています。

専門業務派遣の「雇い止め」への対応
 派遣期間の上限のない専門業務は、厚生労働省の政令で決められています。ソフトウェア開発、通訳・翻訳・速記、秘書、事務用機器操作、ファイリング、添乗、受付、財務処理、建設物清掃、などです。

 派遣法がスタートした八五年、十三の専門的な業務に限って、九カ月を上限として、派遣労働がスタートしました。九〇年には派遣期間の上限が一年に延長、九六年には二十六業務に拡大、二〇〇四年には、二十六専門業務については期間上限をなくしました。

 とくに事務職では、原則一年上限三年の期間制限のない専門業務契約をすることで、直接雇用申込義務を免てきました(しかし、前出のとおり、三年を超えている場合、その業務に新たに人を雇い入れる場合は、その業務にあたっている派遣労働者に直接雇用申込みをしなくてはなりません)。

 専門業務のもっとも多い、専門業務五号の「事務機器操作」は、具体的には「電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれに準ずる事務用機器においての操作の業務」、「それと一体的に行われる準備及び整理の業務」とされています。「迅速かつ的確な操作に習熟を必要とするものに限られ」るとされ、「ファクシミリ、シュレッダー、コピー、電話機、バーコード読取器などは含まれない」(厚生労働省『派遣業務取扱要領』より)とされています。

 派遣労働者が就業場所においておこなうゴミ捨てや電話対応などについては「付随的業務」として、一日あたり、あるいは一週間での全労働時間の一割までは認めていますが、一割を超える場合は、上限期間原則一年の一般業務として扱われ、直接雇用の対象となります。また、まったく違った業務や、就業場所ではない場所での業務をさせていた場合も同様です。

専門業務偽装で労働局の是正指導も
 名古屋の東芝関連の職場で、専門業務二号の「機械設計」として契約していた派遣労働者は、工事資材手配から、工事会社の調整、工事現場立会い、安全パトロール、クレーム調整など、他の正社員とまったく同じように専門業務の内容を超えて働いてきました。すでに派遣期間制限を超えており、直接雇用されるべきと労働局に申告、正社員として職場復帰できました。大阪の大手企業で五号「事務機器操作」で契約していた女性は、実際は四年以上にわたって経理と総務業務の仕事をしてきました。女性は弁護士と相談して、労働局に申告しました。労働局は、実際は一般業務であったとして、すでに派遣可能期間を超えており、派遣法四十条の二に違反しているとして、派遣先に対して文書で、雇用の安定を図ることを前提として是正指導をおこないました。その際、口頭で直接雇用するようにすすめ、労働組合も、団体交渉のなかで正社員にするよう求め、正社員になることができました。

 「派遣切り」、「雇い止め」について、「不当だ」としてたたかう場合も、当面の住居や生活費が必要です。生活保護、雇用保険の手続き、生活住宅支援などを参考にしてください。(日野徹子)


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